先日、新聞を読んでいて目が釘付けになりました。「人気の久保田・獺祭も」とあります。読んでみると新事業で東京の酒問屋のコンタツさんがトランス・コスモスさんという会社と組んでECサイトで弊社の酒とか有名地酒を販売するとの こと。(有名地酒って照れるなあ) 要はネット通販でしょうから、今更という感じがしますが・・・。佐野屋さんなど多くの獺祭取扱店がすでにネット通販に載せているわけですから、あまり新味はないのですが・・・実は価格が・・・・ 私どもの希望小売価格の倍ぐらい。

この新事業を発表された東京のコンタツさんという酒問屋さんは老舗で有名な問屋さんです。多くの日本酒関連のイベントなども開催されていて日本酒業界の方はよくご存知の方やお取引のある方も多いのではないでしょうか。とにかく東京の酒問屋としては老舗中の老舗で名門の問屋さんです。 ただ、私どもとは、過去現在ともお取引はありません。

そのコンタツさんが、どこか私どもにもわからないルートで獺祭を集めて販売される。何となく違和感があって、最初は業界に知識のないトランス・コスモスさんの独走かと思い、社長さんに直接電話してみました。

そしたら、「二次取引市場に獺祭はあちこちで出ているので ・・・(なるほど、「二次取引」とこういうプレミア価格の販売を言うんですか)、今回の件については弁護士とも法的な相談を密接にしながら進めました」とのこと。 つまり、法的には違法行為とは言えないから好きにするということですね。

確かに私どもが表示している小売価格は希望小売価格であり、流通の方に対し「この価格にしろ」と強制するのは再販価格を拘束しているという形になりかねませんので、私どもとしてコンタツさんやトランス・コスモスさんにどうこう言うことはできないし、そのつもりもないのですが、「高品質のお酒を少しでもお手軽な価格で」という理念の下、日夜コスト管理等に努力している酒蔵としてはあまり面白くないですね。 なにか私どもの血のにじむような努力が無駄になっているような気がして。。。

また、品質的にも心配であることは確かです。どういうルートを通ってコンタツさんの倉庫まで「獺祭」がたどりついたかわからないわけですから。基本的には「獺祭」は商品(品質)管理について一定の能力と知識を有しており、獺祭のブランド形成に対して価値観を共有できると信じられるところとのみお酒を取引するという原則を貫いています。

実は最近、いわゆる二次取引を経て流通したと思しき商品が、お客様から「品質がおかしい」と酒蔵に持ち込まれる例が増 えています。見てみると、かなり品質の劣化している商品が多いのですが、購入先と購入価格を聞くと正規店ではなくて価格も大体三倍!!! (コンタツさんの名誉のために付記しますとこちらはコンタツさんのお話ではありません。念のため。)

このあたり、旭酒造内部では大きな問題となっています。今回のコンタツさんは正面切っておやりになっていますが、例えば日本最大のGMSのイオンさんや傘下のイオン・リカーさん、近いところでは広島発祥のゆめタウンで知られるイズミさん、みんな大体三倍の価格をつけて「獺祭」を売り場に並べておられます。

皆様、「消費者の味方」というコンセプトを打ち出されて、消費者のために少しでも安く!というお店であるにもかかわ らず、獺祭に関しては、私どもからの直接のルートで販売されている三倍もの価格で売るというこの売り方に、私どもとしては違和感を感じますね。

これぞ「獺祭の光と影」ですね。