もうすでに日経や朝日で報道されましたからご存知の方も多いと思いますが、獺祭は11月23日より東京銀座5丁目に路面店としてストアをオープンさせました。飲食がメインではなく、あくまで販売にフォーカスした店舗です。https://www.asahishuzo.ne.jp/store/

目的はあるがままのスタイルで獺祭を実際に手に取れる場所を作りたいということです。しかもそれはわかりやすい場所でということです。

どうしても酒販店さんなどですと飲食店などの業務筋が販売の主軸になることが多く、百貨店さんなどでも店頭の品切れに泣いてきました。そうすると一般のお客さんから「何処に行ったら獺祭は買えるの?」という問い合 わせが酒蔵に来ることになります。

「お前のところの供給が少ないからだろう」と怒られるのですが、増産体制が整って分かったもう一面の真実は、ご発注いただけないと私どももお取引先に出せないということです。ところが酒販店さんも百貨店さんもバイヤーは数多い銘柄を扱っていますから、獺祭の品切れだけに気を付けていられないというのが現状です。また、中には意図的に品不足を煽って抱き合わせ販売につなげようという店も。だから「増産しても店頭での品不足は解消されないというジレンマに陥る」という現実に直面しています。

また、在庫期間の長期化も問題です。ある一時期、各酒蔵が「吟醸酒は長期保存してもワインと同様に悪くなりません」というセールストークを繰り返していました。そんなこともあって、とんでもなく古い獺祭が出てくることがあります。ある取引先の試飲会で2年前の磨き二割三分が試飲用として出ていました。当然、三割九分や50などの下位商品のほうが品質が良いのは当たり前です。

お客様から「なんで他の獺祭と比べて、二割三分はこんなに美味しくないんですか?」と聞かれて、試飲会の席上で主催者であるお取引先の品質保持の欠陥を指摘することはできませんから、往生したことがあります。

後日、ソフトにその酒販店さんに伝えましたが、少なくとも試飲会に来られたお客様には「獺祭磨き二割三分はこんなお酒」という認識が刷り込まれたと思います。

このあたり、「ちゃんとお取引先の教育をするのが酒蔵の務めだろう」ということも重々わかっておりますが、もぐらたたきのようなところもあっ て、後手後手に回るのが現実です。

ちゃんと美味しい獺祭をご紹介できる場・モデルショップを作りたい。そ うすることによって、全国の獺祭のお取扱店にとってもきっと追い風になる、そんな思いです。

そんなことから銀座店のオープンを決断しました。それと同時に、やっぱり日本のブランドの中心・銀座に日本酒の直営店を開くということも意味のあることと思っています。ともすれば縮み志向の日本酒業界ですが、日本酒というのは楽しむものです。であるなら、華やかに楽しく美しくあるものでなければなりません。

その意味では銀座というのは最高のチョイスと思っております。

また、すでにご存じかと思いますが、来春にはフレンチの神様、世界中にミシュランの星を通算32個持つという、あのジュエル・ロプション氏と共同出資でパリのサントノーレに獺祭・パー・ジュエル・ロブションを開店します。

これも同じ意味で、銀座が日本をにらんでというならパリ店は世界をにらんでということです。

実はこの話も日本酒にとって大きな意味があります。近年、「料理に合わせるには日本酒はきれいすぎる、もっと癖のある日本酒を」といわれることが多かったのです。「大吟醸は飲みやすい。ワインでも飲みやすいワインは子供っぽいものといわれる。したがって飲みやすい大吟醸は子供っぽい飲み物で世界には通用しない」という方もいらっしゃいました。そんな意見を受けて、中には「ワインになりたいのか君は」みたいな日本酒も目についていました。

しかし、獺祭はそんな風潮に背を向けて、純米大吟醸のきれいさの奥にこそ奥深さや広がり・複雑さがあると、まっしぐらに山田錦を使った純米大 吟醸の美味しさを追及してきました。これだけ旗色を鮮明にすると皆様からの風当たりも強かったのですが。

そんな獺祭にあのジュエル・ロプション氏が手を組もうといってきたのです。つまり、優れた日本酒にしかありえない、繊細で美しくしかも料理と 敵対せず寄り添い包み込む、そんな日本酒の特徴を彼が認めたんです。

しかし、これだけ華やかな話題が続くと、なかなか厳しい指摘も多くて、本日のネットの書き込みなど見ていますと、

・獺祭も落ちたなぁ昔は頑なに取引のある僅な酒屋にしか卸さなかったのに、最近は量産体制が整った為か酒量販店でも売るようになってしまった後を追うなよ○○○

・獺祭ブームがかなり前に終わったと思うのだが土地代が高い銀座とかパリに出店して大丈夫

・レアな酒が商魂たくましくなるとダメになる

・獺祭バブル崩壊は思ったより早いのかも。関係ないけど、個人的に岩国の酒は○○が好き。

・最後の足掻き?獺祭を特別上手いと感じた事なし。他にも上手い酒は 星の数ほど有るしね~

・獺祭ってそこまでお金だす価値ある酒か?って思う、ブランド力は付いたけど、こう言うのってあまり日本酒飲まない人が飲むから、流行りがあって流行りが去ると…

・ブランド力は付いたけど、日本国内では流行りものでしか無いので…しかも、高級店=銀座と言う田舎者の発想www

まあ、散々な言われようなんですが、、、うーん、こういうの見ると、やる気になるなぁ。倒錯してるんですかねぇ、私って???

最後に、この中に書いたお取引先の姿は全お取引先の中のわずか1%です。でも、その1%が真っ白なキャンバスを灰色に染めてしまうんです。でも、これが現実だと嘆いていても仕方ないので、工夫して改革して、、、悪あがきを続 け続けるつもりです。