「獺祭はないのですか?」
平成23年10月2日、山口県産業技術センターの理事長(中略)は、皇后さまのお言葉に、耳を疑った。同センターは、県の産業振興につながる研究開発を手がける。日本酒もその一つだ。山口県産の酒米を使った日本酒を展示していたところ、皇后さまは獺祭がないことに気付かれた。
(以上、産経新聞「陛下の足跡を訪ねて」より)

両陛下が、山口国体への御出席に合わせて、同センターを視察された時のエピソードです。

実は私は、山口県の開発した酒米品種を獺祭の酒米としては仕上がりに納得できなかったので、全く使いませんでした。もちろん、山田錦に関してというよりも山口県産酒造好適米全合計の過半数を購入し毎年増やし続けてきましたから「山口県の酒米生産を成長軌道に乗せたのはうちだ」という自負は十分にあります。しかし、それは県などは理解せず、山口県産品のパンフレットや展示場には全く「獺祭は存在がない」という一時期を過ごしてきました。

私からすれば、それを話のネタにさせてもらったり、面白い境遇ではあったのですが、でも、何となく一抹の寂しさも感じていました。しかし、そんなものは皇后さまのこの一言で消えてしまいました。

テレビなんかで拝見するだけですけれど、天皇陛下と皇后陛下のお二人のお姿からいろいろなお覚悟や国民に対するご愛情が見えて、自然に感動してしまいます。畏れ多いことですが。いつか私もあんなになりたい。畏れ多いことですが。

この記事の中にはこんなことも書かれていました。

(保育園を訪問されて)
両陛下が帰られるとき、2~5歳の園児がお見送りに園庭に出た。両陛下は車に乗り込み、後部座席から身を乗り出すように手を振られた。子供たちは、ちぎれんばかりに両手を振り始めた。なぜか全員が笑顔だった。保育士は全く指示していない。周囲の大人はみな、不思議がった。

当時、副園長だった山本聰(あきら)氏(50)=現園長=は「天皇陛下や皇后陛下の存在を、子供たちが十分に理解していたとは思えません。でも、優しく包まれるような感覚は、間違いなく伝わったのではないでしょうか」と語った。

自身の経験もある。山本氏は、応接室で休憩中の両陛下に、お茶をお出しした。お姿を目にした瞬間、涙がこぼれそうになった。慌てて、目をそらした。これまで、両陛下にお会いし、涙する人がテレビに映ると、少し冷めた目で見てきた。自分がそうなるとは、思いもしなかった。

電流が走ったとか、花に包まれたようなとか、あらゆる表現が頭をよぎる。だが、今も、言葉では十分に説明できない。(同じく、以上、産経新聞「陛下の足跡を訪ねて」より)

「ありがたいなぁ」と思います。両陛下は常に国民を愛情に溢れた目と心で気にしていただいている。私どものような跳ねっ返りの酒蔵でさえも。