やっと!!! やっと!!!・・・・・ニューヨークの酒蔵の完成が近づいてきました。酒蔵の建物本体と精米所は出来上がり、瓶詰機器など大体主要な機材も入っています。最後になっていた排水設備の建物も大体完成しました。今は主要機器が入るまで仕上げられなかった仕切りの壁などの仕上げにかかっているところです。

考えれば長かったですね。最初にこの話が入ってきたのは2016年の冬。すぐ、その翌月の一月に、社長に現地調査をしてもらって、アメリカ東海岸ニューヨーク郊外に酒蔵を建てるという決定をしたのは2017年の初春でした。

酒蔵用地の選択も済み、秋には設計も、岩国出身で東大卒業後アメリカのイエール大学に留学し羽田の国際ターミナルや日本コカ・コーラの本社なども設計経験もあり、アメリカの事情にも詳しいという、光井先生にお願いし、彼が半分籍を置いているアメリカの設計会社と共同で設計をしてもらうことになり、建設計画は走り始めました。

ところがその後、工期は遅れに遅れ、2019冬には完成する予定!!のはず!!だった酒蔵の完成は今に至るのです。その間、蕎麦屋の出前ではありませんが、多くの方に「もうすぐです。来春には完成します」と何度ぬか喜びさせたでしょう。

実はこの要因としてコロナパンデミックも大きいのですが、それ以上に大きな要因を占めたのは、私たちがアメリカの規制や法律がわからず、またアメリカの関係当局も日本酒とはどんな造り方をするか分からないから「自分たちの考える安全な手法」を要求してくる、といったことが重なり、またアメリカの設計会社側もそのあたりに鈍感というか、こちらが悪く言うとなめられていたこともあり、そのたびに毎回!! 毎回!! 順調に?躓いて!! それが工期を長引かせる原因になったのです。

お蔭で投資額も上振れしました。土地代共で30億の予定が80億に(日本円です。しかもドルが110円以下の時の換算。今なら100億超すかも)。建築費なんてざっと当初見積もりの三倍ですから・・・ねぇー(大泣)・・・。上場企業の社長だったら株主から責任を問われて「クビ」の案件ですね。

さすがに、よく言われる「サンクコストにこだわることによる失敗:それまでに投下した資金が無駄になるのが嫌で事業が失敗に向かっているにもかかわらず途中で止められない(例としたら太平洋戦争における日本陸軍のインパール作戦でしょうか)状態」に自分がなってないか自問自答し続けたこの数年間でした。

また、旭酒造は皆さんからいただいた獺祭の売上の収益からこの資金を拠出しているんですから、「これで本当にお客様に対して経営者としての責任を全うしているのか?」「長期的に見た時この投資はお客様への利益になるのか?」ということも考え悩んだ数年間でした。

有難いことに、この間のともすれば悪い方にしか頭が行かない私を支えてくれたのは、とにかく売り上げが増えたこと。海外の増加もあって、コロナ禍を挟んでいるにもかかわらず決断した年の倍の売上金額に成長しました。

そんなことで、何とかスタートを切れそうです。私も来年の一月下旬にはアメリカに入り五月上旬までは現地の酒蔵に張り付いているつもりです。その間にアメリカの酒蔵の製造のスタートと最低限の安定化まで見届けるつもりです。どちらにしても一年間は日米を行ったり来たりの生活になると思います。

でも、勇ましいことを言っておりますが、実はここに大きな私のストレスが有るんです。情けないですが、英語ができない、車の通行方向は日本と逆だけど大丈夫かね? どっかのお年寄りみたいに高速を逆走したらどうしようetc,etc。情けない悩みがいっぱいあるんですよ。

しかし、現地に駐在して獺祭BLUEを製造する社員たちの事を考えればそんなことは言ってられませんね。そして、もちろん、「お客様から預かった収益をこのニューヨークの酒蔵に投資してよかった」という評価を自分に実感できるまでは石にかじりついても育て上げることが決断した私の(そして現社長の)責任ですから。

怖いけど行ってきます。まあ、かっこ悪い失敗を例によっていくつもやるでしょうから、また笑ってください。

最後に・・・まだ・・・「夢の途中」・・・です。

と・・・・・・・・・・・・・・・、ここまで書いて、アメリカに先乗りしているスタッフから報告が、建築施工をしている会社が排水施設の壁に耐水性のない壁材を間違えて張ってしまっていたことが判明。至急、先方の責任で張り替えることになったのですが、どんなに急いでも3~7週間の遅れが発生する見通しです。

またもや!!!!・・・・・まだ夢の中じゃなくて、まだ「無我夢中」(泣)・・・とほほ(大泣)。

 

★今年度EOY代表

昨年は私が頂いてこの6月にモナコに日本代表として行かせてもらったEOYの日本代表の座、今年の日本代表が決まりました。今年は星野リゾートの星野さんです。一位選出のインタビューでも「私は世界一を取りに行きます」と力強く宣言されました。私は自分では「良いところ行ってる」と能天気に信じてたんですが、残念ながら一位にはなれませんでした。ぜひ、とってほしいですね。実は欧米が圧倒的に強くて、日本は世界一になったアントレプレナーはまだいないんです。

獺祭は今年も世界大会の期間中、SUSHI and SAKEの「獺祭ティスティングパーティー」をモナコで開催するつもりです。お邪魔にならないように側面支援しなくっちゃ。何ができるか社内で問いかけています。

★蔵元の読書

今読んでいる本、「After Steveアフタースティーブ」;スティーブ・ジョブズ亡き後のアップルの成長。お察しのとおり、気になりますよねぇ。次は「エクソソーム時代のがん克服・長寿回生・免疫強化」です。日経新聞の書籍広告で見つけました。良くあるとにかく売れれば良いという「健康トンデモ本」ではなくて真面目な本です。