大平由美の居酒屋めぐり

居酒屋めぐり

第十回 江戸蕎麦手打処『あさだ』東京都(浅草橋)

更新日:2007.12.17|居酒屋めぐり|

江戸蕎麦手打処あさだHPは ⇒ http://www.asada-soba.co.jp/

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浅草橋駅から徒歩3分。
江戸通り沿いです。

和がブームだそうです。囲まれていて安らぎをおぼえる、文化と歴史を感じる、職人技がすばらしい、粋である・・・など、理由は様々。多様な流行を多様に追いかけるのは日本人の十八番だと思われますが、伝えるべきものはきちんと伝え、遺し、大切にしていきたいものですね。さて、そば打ちは、特に男性の間で大分前から流行っているようです。習えば習うほど難しく、奥が深いものだと聞きます。神田で生まれ育ったわたしは、おそばが大好き。まったくの私見で関西の方には申し訳ないのですが、うどんよりもそばに、食文化の奥行きと職人技を感じずにはいられません。お酒に合う、そこでお酒が飲めるというのが本音という説も・・・。(苦笑)
今回、皆様にぜひご紹介したいお店は、1854年(安政元年)創業の、『江戸蕎麦手打処 あさだ』です。

おそば屋さんではまずお酒というのが、江戸っ子の慣わしとでもいいますか、おそばができあがるまでの時間を“そば前”と言いまして、いい酒と肴で待つのを、おそばをいただくのと同じぐらい、楽しむのを粋とします。そのぶん、おそば屋さんへの期待、求めるものも大きくなります。
八代目の若旦那、粕谷 育功(やすのり)氏は、利き酒師の免許を持ち、『あさだ』を先代から継ぐまで、7年間、道場六三郎プロデュースでその名が知られている「ろくさん亭」などで、じっくりと日本料理の修業をされたとのこと。お品書きには、酒好きをそそる数々のお料理が揃っています。
お酒のチョイスも素晴らしく、少々長く居座っても(すみません!)気兼ねせずにいられる心地よさも大きな魅力です。

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一階はテーブル席。
二階にはお座敷も。
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座布団の柄がきれいで、
思わずカメラを!

 

まずは、湯葉刺し、まぐろの山かけとともに、「獺祭・磨き三割九分」をいただくことにします。お料理は、ことさら奇を衒わずシンプルなのですがとても丁寧に、お酒に合うように作られているのが、口に入れた途端に分かります。丹精こめて醸されている獺祭との相性がいいのは、言わずもがなですね。追加でお願いした、地鶏の照り焼きと穴子の骨せんべいも、すすっとお腹におさまっていきます。この“ヤバい”というほどのスムーズさは、わたしの胃が大きいというよりも、食中酒として最高と言われる三割九分によるものと思われます。はい。

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とろっとした湯葉刺し。
まぐろも美味でした。
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地鶏の照り焼きも
お酒に合うんですね。

 

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立派なお酒の品揃え!

先代に、そば屋を継ぐように言われたことは一度もなかったという粕谷さんですが、お店を継ぐことはご自身にとり、とても自然だったとのこと。

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酒飲みをそそるメニュー。

おそば、お料理、お酒が三位一体となって、お客さんがそれを楽しんでくれればと、日々、心を込めたお仕事をされています。お酒の品揃えにも目と心を配ります。「獺祭」に続いて「田酒・特別純米酒」と「あさだ」をいただきました。お店の名前でもある「あさだ」は、岩手県菊の司酒造がこちらのお店のために醸した、山田錦を使った大吟醸。飲みやいけれど、甘味がふわっと広がる優しい味のお酒です。

〆は、やっぱりおそばです。お店のそばの味をそのまま伝える「せいろ」は定番ですが、暖かい松茸そばもいただきました。そば粉は北海道産の新そばで、九割そばが『あさだ』の打ち方です。(11月からは茨城産の新そばも使うそうです)
自慢のおそばは、しっかりした味と風味があり、しかも喉ごしなめらか。深みのある味わいを持つ、澄んだ出しとの調和がぴったりです。食べていて、芯があって凛としていながら、たおやかな女性と、包容力と清潔感を合わせ持つ粋な男が、寄り添っている映像が浮かんでくるような気がするのが不 思議でした。年内は23、24日以外は休まず営業。
年越しそば、やってますよ。

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おすすめのせいろそばと、
香り豊かな松茸そば。
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くずきりを使ったスイーツ。
心配りが嬉しいです。

 

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八代目店主の
粕谷育功氏と筆者。

浅草橋が問屋街として栄え始めたのは江戸時代の中期から後期にかけてといいます。帽子、文具、輸入雑貨、アクセサリー素材など、さまざまな問屋さんが軒を並べる町で、とりわけ目立つのは人形問屋さんです。
“人形は顔が命”といいますが、“うちの店の命は心です”と、店主の粕谷さん。江戸通りに出て、町の由来ともなった浅草橋を、浅草方面へと渡ってしばらく歩くことにしました。初冬の風が吹き始めていましたが、体も心もほんわかと暖かかったのは、下町の親しみやすさと『あさだ』の心意気のおかげだったに違いありません。

おいしいお酒とお料理に出会える幸せに感謝して、乾杯!

 

蔵元の蛇足(この「居酒屋めぐり」を蔵元が読んで)

今回、作者の大平さんから「命つながりで書いてください。獺祭の命は何?」と言う御下命を受けました。うーん。実は困っちゃいまして。だってねぇ、この欄は蛇足ですから「くだらない一言」を『命』としているんですから。

あっ、御下命の回答が出ました。良かった、良かった。

でも、最後に、「逃げたなー」って言われるんで、お答えすると、獺祭の命って何時もよく言うように、お客様の楽しい生活のためのツールとして少しでも美味しい酒を造りたいお届けしたいという「心」です。

でも、これって、日本の職人文化の中にはどこにでもあって当たり前のものだと思います。ミシュランには理解できなくても。

(蔵元 桜井博志 記)

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