大平由美の居酒屋めぐり

居酒屋めぐり

第十一回 『つきひ』山口県(周南市)『船方農場』山口県(阿東町)

更新日:2008.02.23|居酒屋めぐり|

つきひHPは ⇒ http://rp.gnavi.co.jp/sb/3007309/

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風情のあるのれんに心惹かれます

純米大吟醸酒『獺祭』にピッタリと合うお魚といえばフグがまず思い浮かぶという方が多いと思います。わたしもそうですし、これぞという時にはフグ刺しと二割三分で日本人である(かつ酒飲みである)幸せを感じるわけです。ところが、゛春から秋ならば、オコゼの方がうまい・・・かも〝と蔵元。ならば実際に口にしようではないかと、秋真っ盛りの頃、いそいそと駆けつけたのでした。うかがったお店はJR徳山駅から七、八分ほど歩いた、桜馬場通りと平和通りの交差点からほど近い「つきひ」という和食屋さんです。

創業して七十有余年のお店を切り盛りする明るい女将さんと、包丁さばきが見事な三代目の山中由介さんが迎えてくださいます。大きな水槽に泳ぐ魚たちをワクワクする思いで覗き込み、栃の木でできたカウンター席につきました。
まずは『獺祭・磨き二割三分』を馬上杯でいただきます。肴は鮟鱇の肝とフグの煮こごり。まさに絶妙の組み合わせです。ふぅ。日ごろの疲れも悩みもスーッとどこかに逃げていくようです。

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早く食べたい、早く飲みたい。
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銀杏の香ばしさも『獺祭』と合います。

 

実は、オコゼのお刺身をいただいたのは今回が初めてでした。関西地方では絶品の刺身である白身魚として知られているようですが、オコゼといえば唐揚げの方がメジャーだと思っているのは、関東エリアではわたしだけではない筈。さっきまで水槽の底でじっとしていたオコゼが山中さんの手でさばかれ、あの魁偉な容貌からは想像もつかない薄ピンク色の身が姿を現す様は一見の価値があります。そして食せば感動さらに高まります。美味というだけでは言い尽くせないほど!口に入れた瞬間のふわっとした食感と甘やかな香りがハーモニーを奏でたあと、しこっとしたかみ応えとともに旨味が広がっていく・・・・・・。典雅な香りと深いコクと豊かな後味を持つ二割三分と実に良く合うのです。おそるべし、オコゼ。おそるべし、徳山。

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黙々と鮮やかなお仕事をなさいます。
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見事な活きづくり。
ゴソッと動く度にビックリしました。

 

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『つきひ』のコロッケ。
パリッとカラッと揚がってます。

「つきひ」では、新鮮な海の幸はもちろん、腹応えのあるご飯のおかずも美味しくいただけます。カラッと揚がったレンコンのはさみ揚げ(海老、大葉、オクラが入ってます)、先代からの「つきひ」伝統の味であるコロッケには『獺祭・三割九分発泡にごり』を合わせました。50のにごりを更に進化させたキレの良さは、こってりしたお料理にも負けません。また、揚げ物がどうもという方も、このお酒と味わえば油っぽさが気にならずにいただけるのではないでしょうか。一度、お試しあれ。

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シャキシャキのレンコン。
生麩もきれい。

山口県といえばフグ、白身魚のお刺身といえばやっぱりフグというわたしの思い込みに、新たな一品が加わる食の体験ができました。「つきひ」のオコゼに感動。カウンターと小あがり、二階を合わせて25名ほど入れますが満席のことも多いとのこと。さもありなん。素晴らしい食とお酒のコラボレーションに感謝の夜でした。

『船方農場』 山口県(阿東町)

船方農場HPは ⇒ http://www.funakata.co.jp/

翌日は、徳山から車で一時間ほど走り、『獺祭』の素ともいえる山田錦を栽培している船方総合農場を訪れることにしました。 今の温暖化で、紅葉はまだまだでしたが、カーブの続く山道のところどころに産直品販売のお店があり、゛松茸″という看板を見かけるたびに身を乗り出したのですが、季節的にわずかに遅かったためゲットできませんでした。残念。でも、松茸は猛暑のあとは不作といいますから仕方ないとあきらめることに。そうこうしているうちに到着したのが船方農場です。
広大な農場内はいくつかのエリアに分かれています。260〜280頭の牛やたくさんのヤギがいる牧場、牛乳・チーズ等の乳製品を製造する工場、シクラメンなどを栽培している温室群、乳製品、牛肉や肉加工品のみならず『獺祭』も売っている売店とレストラン、さらに畑に田んぼ、etc・・・・・・。全部で38ヘクタールだそうですが、38ヘクタールって一体、どれぐらいなんでしょうか。1ヘクタールは100アール、1アールは100㎡・・・・・・あー、もっと分からなくなってきました。東京ドームで○○個分といった表現に慣れきってしまっている自分を反省しつつ、緑あふれる自然の中で、つきたてのお餅をいただきました。

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食事の時間は牛たちも楽しそう。
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色とりどりのシクラメン。
春にはチューリップも。

 

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農場内の売店。
こんなにたくさん
『獺祭』売ってます。

船方農場は、酒米・山田錦を作っています。旭酒造は年間、千俵余りをこの船方農場から仕入れているそうです。ご存知のように精米すると米ぬかが出ます。旭酒造は山田錦を二割三分にまで磨く蔵ですから、その量は少なくはありません。そこで有効利用のあの手この手が考えられているのですが、農場では米ぬかを山田錦の栽培用肥料として使う試みがなされています。除草にも効果が認められると船方農場社長の村田さん。環境にやさしい肥料と言えそうですね。

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刈り取りの終わった
山田錦の田んぼの前で。
左から、旭酒造の桜井社長、
筆者、船方農場の村田社長。

 

農場で作られている様々な食材は通販で買い求めることができます。ヨーグルト、アイスクリームは新鮮な生乳の味に懐かしさを覚えました。「体に優しい」といえば分かっていただけるでしょうか。余計なもの、混ざり物が入っていないという安心感は、食の安全が問われている昨今、とても貴重です。お米や野菜、お肉、加工品がどのように生産されているか、仲介業者に頼りきることなく、消費者も実際に足を運んで確かめてみることも大事なことだと実感しました。船方農場は、わたしたちに向けて、いつでもその門を大きく開けています。

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いくつ食べても飽きない味の
アイスクリーム。
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山田錦から造られたお味噌。
美味しいです。
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いろいろな味のジャムを添えても
美味しいですよ。

 

おいしいお酒とお料理をいただく幸せに心から感謝して、乾杯!

蔵元の蛇足

畜産経営の農業法人としてスタートした船方農場。最初はその規模の大きさゆえ他の農家に与える影響を慮って米作りはしなかったそうです。当時、良い米が欲しくても、やる気のない農業関係者達に囲まれて、あがいていた私からすれば「是非こんなところが責任を持って米を造ってくれたら」と思う農家でした。

数年たって、「船方農場が米を作り始め、山田錦の売り先を探している」と聞いたときは、まるで中学時代のマドンナに再会した気分。「是非、うちの米を栽培してください」と頼み込みました。船方農場との付き合いはこんなかたちで始まりました。ちなみに、昨年、1486俵(60kg)の山田錦を船方農場から購入しています。

山口県内でこんな農家に出会えたことを本当に感謝しています。

(蔵元 桜井博志 記)

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