大平由美の居酒屋めぐり

居酒屋めぐり

第十四回 『升本』 東京都(虎ノ門)

更新日:2008.06.19|居酒屋めぐり|

升本HPは ⇒ http://g.pia.co.jp/shop/90290(グルメぴあより)

とうとうやって来ました。情報誌の居酒屋番付で 堂々と横綱を取る、 これぞ正統派、居酒屋の中の 居酒屋、昭和44年創業の「升本」です。

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4時半からやってます。
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1時間後にはギッシリとなりました。

 

デジャ・ビュ・・・・・・

初めて升本を訪れる女性は、ネクタイ族のあまりの多さに、少な からず引くと聞いていましたが、わたしはというと、“ここ、来たこと ある”という既視感、そう、デジャ・ビュにとらわれました。理由は 二つあります。 一つ目は、生まれ育った神田の町、取り分け、駅の周りには何軒 か、似たタイプの居酒屋が並んでおり、二十代の頃(えー、かなり 昔のことです)、会社勤めの帰りに、おじさん達に自然と混ざって 飲んでいたこと。 二つ目は、「升本」の長テーブルの下に置かれた丸椅子です。 写真をよーくご覧下さい。ただの丸椅子かと思いきや、小学校の 理科室で使われていた(今でも使っている学校も!)本物の丸椅 子なのです。掃除の間は逆さにして机の上に乗せておきましたっ け。ほうきでチャンバラごっこをして、ちっとも掃除をしない男子を 怒鳴りつけたり吊るし上げたりした思い出が・・・・・・ おっと、これは冗談です。断じて、冗談ですから。

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飲みすぎて
転げ落ちないようにしないと…。
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もっとあります。充実のメニュー。

 

名物料理と全国のお酒
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日本全土が女性の体のように
見えるのはわたしだけ?

一番に挙げられるのが、たこおでん。一匹丸々のジャンボだこは 優に三人分はありそうです。あれもこれも食べたいので、切り分け られた一人前のたこおでんとお刺身三点盛り、さらに、やはり名物 のかつ煮を注文しました。 ほかにも、豆腐一丁入っている煮込み豆腐、お店の焼き印が押さ れた自家製出し巻き卵など、名物はズラリとあります。酒飲みの胃 袋を満たしてくれる肴、流行に左右されずに愛され続けてきた名物 料理があるということが、升本が長年、親しまれている証明とも言え るでしょう。 お酒は、全国の地酒の中から、もちろん『獺祭・磨き50』です。 細かい説明は必要ありません。おいしく、気持ちよく、飲んで食べて 夜が更けていきます。因みに、獺祭50、なみなみ注がれてこの値 段(580円)は、正直、魅力です。

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気前良く、とくとくと
注いでくれます。
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だしの味がきいた、
名物たこおでん。
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かつ煮と刺身三点盛り。
味もボリュームも大満足。

 

成り立ち

升本はもともとは酒屋さん。江戸時代初期、今から400年も昔に飯田橋にできたお店が第一号。 その総本店から暖簾分けされ虎ノ門にお店を構えたのは、現社長である篠原義昌氏のお父様でした。 当時、虎ノ門の界隈は今のようなビジネス街ではなく仕舞屋(しもうたや)、すなわち普通の家ばかり。 お酒は外で飲むのが当たり前の時代に、なんとかお酒を売ろうと、向かいに居酒屋を構えることになっ たとのこと。 当時は男性限定。なぜって、女性が店内にいたり一緒だったりすると、男性の飲むペースが鈍るから。 今では、女性の飲みっぷりが上がり、店内にはわたし以外にもあちらこちらに女性の姿が見えましたが、 それでも九割がたはスーツ姿の男性陣。フランチャイズの居酒屋、隠れ家風のモダンな居酒屋とは明ら かに客層が違います。ここは、お父さんと呼びたくなるような方々が、仕事を終えてホッと一息つく場所 なんですね。なんだか日本社会の縮図が垣間見えるような見えないような。

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かつ煮と刺身三点盛り。
味もボリュームも大満足。
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『獺祭』の上段に
ホッピーがあるのが、
いいですね。

 

時代とともに

昨今、70年代風、80年代風が流行りです。インテリアを当時になぞらえたレストランやバー、重ね着が イメージを変えてレイヤードとなって蘇ったファッション、当時を懐かしむ映画も大ヒット。 でも、それらが持つブーム性と、升本が保ち続けている個性は少々違うように感じます。 ブームは時代とともに来ては去るもの。升本の昔も今も変わらないその雰囲気を、どこかが真似ようとして も、到底、不可能なことでしょう。今の二十代の若者たちの3人に1人は、お酒を飲まないとか。そんな時 代の波の中で、これからも愛飲家の心を惹きつけるべく、変わらない升本であるのか、変わっていく升本で あるのか、興味は尽きませんが、いずれにしても足繁く通わずにはいられないことでしょう。

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旭酒造の木下さんと
「升本」社長の篠原さん。
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店長の斉藤さん。
お客さんを和ませる笑顔です。
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お向かいの酒屋
「MASUMOTO」。
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『獺祭』がフィーチャーされた
充実のギフトも。

 

おいしいお酒とお料理をいただく幸せに心から感謝して、乾杯!

蔵元の蛇足

いかがでしたでしょう。作者をこの店に紹介かたがた案内して、後の席があるもので、お酒は一杯半、 料理はたこおでんとお刺身を少し、だけで席を立つのにものすごく後ろ髪を引かれたのはなぜでしょう。 この後の店は仕事がらみではありましたが、南青山のちょっと洒落た和食店だったのに。取材で残れる 大平由美さんがうらやましかったなぁ。

それぐらい、オトーさんにはたまらない魅力のある店です。実は、先日惜しまれつつ閉店した同じ虎ノ門 の居酒屋名店中の名店、「鈴伝」が閉まる最後の数日間、ここのオーナーは客として通い続けたそうです。 オーナーが経営者というより「ただの酔っ払いのオトーさん」であり続ける。この店の素晴しさが分かるでしょ。

(蔵元 桜井博志 記)

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