
居酒屋めぐり
第二十四回「逢 坂」(東京・赤羽橋)
【ホームページ】http://www.ohsaka.net/
赤羽橋というと、ある友人が京浜東北線沿線の赤羽駅近辺のどこかにある橋の近くかと聞いてきました。いえいえ、今回、伺った「逢坂」のある赤羽橋は、東京タワーに一番近い駅のある町です。タワー周辺はもちろん、増上寺から芝、プリンスホテルのお庭などを散策しがてら、ふと入った横道に、こんなお店を見つけることができたら、あなたはとってもラッキー。でも、実は予約必至の人気店です。お出かけの前(当日や前日は厳しいですよー)には、電話して確かめてくださいね。
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やさしいお料理 ふくらみあるお酒
店内に入ると、不思議とホッとした気分になりました。店主の大坂さんの少し照れたような笑顔のせいか、ほどよい明度の照明のせいか・・・・・・。カウンター席について、おまかせのコースをオーダーしました。それ以外にも美味しいものがあったらプラスαしてくださいと、勝手なお願いもしてしまいましたが。お通しはいつも二品。ひとつはビシソワーズにじゅん菜、梅を添えたもの。もうひとつはセロリとかますの焼き浸し。これが両方とも、実に美味しいんです。たいてい、二品のうち一品は洋を取り入れたお皿が出てきます。乳製品は胃に粘膜を張るらしいと聞くからと大坂さん。お酒を飲むわれわれへの思いやりなんですね。ちなみに、桜の頃におじゃました折は、新たまねぎを使ったオニオングラタン・スープでしたっけ。あれもやさしい甘みがしてよかったなあ。そんな「逢坂」のお料理には、ガツーン系ではなく、ふくらみと甘みを持ち、雑味なくきれい系のお酒が合うと、わたしには思えます。ということで、お酒は、『獺祭・純米大吟醸 磨き三割九分』。言葉にしなければいけないのに言葉にならない、幸せの一瞬とでも言いましょうか。何ごとにも感謝したい気持ちになってくるのでした。
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女が誘う 男が誘う
この日のお造りである、くえ、鯛、うにの三品に続いて出てきたのはアオリイカの薄造り。シルクの薄布のようにはかなく輝くアオリイカは、口に入れるとふんわりと甘く、イカでないようでいて、やっぱりイカで、食べるものを楽しませ驚かせてくれる味わいと感触でした。お酒もスルスルと進みます。『而今・雄町 純吟無ろ過 生』、さらに『くどき上手・亀仙人 生詰』と、やっぱりきれいで飲みやすく、しかもコクのある銘柄をいただきました。
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「逢坂」は2007年11月にオープンしました。コンセプトは、“美味しい和食と美味しい日本酒”。以来、数々の雑誌に紹介され、高い評価を受けています。最近は特に女性誌に取り上げられることが多く、客層も女性がかなりのウェイトを占めているように感じます。この日も、男性のみのグループは見かけませんでした。
たとえば……
「いい店、見つけたから一緒に行こう」と、男性が女性を誘いたくなるお店と、逆に、「ステキなお店があるんですよ。ご一緒しませんか?」と、女性が男性を誘いたいと感じるお店には、いくばくかの違いがあることでしょう。いえ、実際、かなりの違いがあるんです。それぞれに楽しいのですが、自分のお気に入りのお店にするかどうかは別問題。男性と女性の持つアンテナは、方向も感度も違うのです。それでも、「逢坂」は、女性に連れられてきた男性も、男性に連れられてきた女性も、気に入るとわたしが保証します。お料理もお酒も雰囲気も、とりわけ店主の本気ぶり(でも、シャイなのでさり気ない……)には誰もが感じ入るはずです。
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裏切られる快感 予想通りの安心感
喜寿を迎えるまで、毎日でも血のしたたるようなステーキやジューシーな焼肉を食べるんだと思い描いていたのはただの無謀、無思慮と悟った昨今、こってりしたものは、すっかり敬遠しがちとなりました。落ち着くところに落ち着いたと言いますか、自分が作るのも、食べに行くのも、日常の食事の中心は和食。そうなると、評判のお店に行っても、この素材はこう扱う、味付けはこう……と、だいたいの見当がつくものです。見当がつくというよりも、期待通りの展開になるわけで、それは安心感につながり、美味しかった、よかったという満足感に包まれることに。ただ、その中に、ちょっとサプライズがほしいと思いませんか?「逢坂」には、それがあります。その意外性すら、心地よく、やさしい。この日、〆の鯛茶漬けに添えられたのは、緑茶。だしを予想していましたが、さらりとかわされました。たっぷりのコースのあとでも、さらさらとお腹に入っていく鯛茶漬けは絶品でした。
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今夜も素晴らしいお酒とお料理に出会える幸せに感謝して、乾杯!
蔵元の蛇足
いかがでしたでしょう。大平由美さんが感激してるのが分るでしょう? 実はお気楽蔵元の私もちゃっかり取材に便乗しました。で、結論。概して美味しい店は女性のほうが良く知ってる。雰囲気が良くて美味しくてしかも安いなんて店は女性に聞くのが一番。男に聞くとたいてい「いつ行っても空いてる」とか「オバハンが面白い」とか、ま、あまり美味しそうな店は出てきません。
しかも男は、本当に良い店を見つけたときは誰にも教えず自分だけの店にしようとします。その点、女性は博愛精神に富んでいてみんなに教えてくれます。やっぱり美味しい生活をしようと思ったら虚心坦懐に女性の言うことに耳を傾けるのが一番ですよ。ご同輩。
(蔵元 桜井博志 記)




















