大平由美の居酒屋めぐり

居酒屋めぐり

第八回 『串駒』東京都(大塚)

更新日:2007.08.31|居酒屋めぐり|

大塚HPは ⇒  http://www.kappore.co.jp/sakabayashi/kushik.html

写真
杉玉と提灯が暖かく
迎えてくれます。
写真
その日のおすすめ。
上から順に食べたくなります。

大繁華街である池袋、おじいちゃんおばあちゃんの原宿として賑やかな巣鴨のことは全国的に知られていますが、その間に位置する大塚という町は、どこかのんびりとしていて暮らす人々も大らか。都内でわたしが好きな町のひとつです。好きになる理由はほかにもあります。自宅からほど近いので町並みに親しみがあるということ。そしてなによりも、大塚には酒好きをそそるステキな居酒屋さん(それも日本酒が充実!!)が数多いのです。これが最大の魅力でしょうね、やっぱり。今回は、そんな名店の中から、創業27年の『串駒』 におじゃましました。

昨年、ずっと営業されていたお店から、少しだけ駅よりの建物に『串駒』は移転しました。懐かしい厨房入り口の雰囲気や奥にお座敷があること、全体の落ち着いた感じはそのまま残されて変わっていない一方で、店内は広々と明るく、テーブルもドーンと大振りになっています。随所に施された趣のある装飾が、より引き立つ構造へとリニューアルされたように思えます。

写真
禎さんと飲むと、
メモしたくなりますよ!

写真
禎さんと飲むと、
メモしたくなりますよ!

『串駒』といえば・・・当時、無名だった「十四代」を世に知らしめたことで有名ですが、ほかにも美味しいお酒がズラリと揃っています。でも暑い夏、まずはビールで、お通しとして出てくる、いんげんのすり流しをいただきます。粒だった感触が楽しく、体の中をきれいにしてくれる爽やかで健康的なお料理です。二品目のお通しは、ナメコととろろの茶そばで、これまた清涼感のある体に優しく、さあ飲むぞという客側の体調を整えてくれるオードヴルとでもいいましょうか。準備は万端です。まずは「獺祭・発泡にごり酒」からスタート。いつもながらスキッとしておいしい。

夏の発泡にごりは最高です。続いて「獺祭・磨き三割九分」「開運・ひや詰め純米」、熊本産の馬刺し、クレソンとホウレン草のサラダを注文。そして『串駒』のオーナーである大林禎さんと、楽しく酒盛りと相成りました。
"「獺祭」はやさしい味でとにかくキレがいいねえ。酒は人なりと言うでしょう。この味は社長の人柄なんだろうなあ"と、禎さん。なるほど。このあと、含蓄のある言葉や楽しい(!?)冗句で、大いに座は盛り上がりました。

写真
禎さん、『獺祭・発泡にごり』を
手に笑みを浮かべて。
写真
禎さんと飲むと、
メモしたくなりますよ!
写真
霜降りの馬刺し。
とろける美味しさです。

 

写真
後日、わたしも作ってみました。
皆さんもどうぞ!
写真
カレー粉味も
日本酒に合うんです。

『串駒』のお料理は、まるで酒との出会いを待っているかのよう。飲むほどに食べたくなり、食べるほどにまた飲みたくなっていくのです。私見ですが、お酒に合うお料理には、どこかに小さな、それも絶妙な透き間(隙ではなく)があるのではないでしょうか。そこに、お酒がスーッと入っていく。鍵穴にぴったり合鍵がはまったときのような、ちょっとゾクッとする感覚のような・・・。
カレー粉につけていただく穴子の天ぷら、大豆を一週間、生醤油につけたものをかけた温豆腐を、ふたたび「獺祭・発泡にごり」、そして「飛露喜・純米吟醸」、「佐久の花・辛口本醸造」とともに味わい、自己流の解釈に確信を得たのでした。

 

写真
最上川の船頭さんが
かぶっていた傘だそうです。

写真
かいこを乗せる桑の葉っぱの
台になる竹篭の天井。

閑話休題。禎さん語録の一部をご紹介しましょう。

《愛もビジネスも下克上》
・・・・・・人生は厳しいんですね。
《人生には三つの坂がある。上り坂、下り坂、そして、まさか》
・・・・・串駒の゛今〝は、その゛まさか〝の積み重ねなんだそうです。

《酒を利いてるんじゃない、人を利いている》

・・・・・・酒蔵さんが、どうでしょうかとお酒を持ってきたときに。

《酒は化ける》
・・・・・・同じ蔵で同じ材料を使っても、造り手が変わると大化けすることも。

《現場は舞台》
・・・・・・禎さんの舞台は串駒。そしてすべては、その現場で起きてるんですね。

禎さんはさらにおっしゃいました。『串駒』で、お客さんに蔵元の景色を見てもらいたいのだと。ある蔵は山の中に、ある蔵は田んぼを見晴らす平野に、ある蔵は澄んだ水が疾く流れる川沿いに・・・・・・都会で仕事に追われて急いで生きているわたしたちに、そんな風景を感じさせてあげたいのだと。『串駒』には、その心遣いがぎっしりつまっていました。

とらやの羊羹で一升飲めるほど甘党という禎さんに見送られて『串駒』をあとにして、低地で地下鉄を通せなかったために、今も比較的静かなJR大塚駅に向かいます。辺りは戦前までは花街だったそうです。日本酒の美味しいお店が多いのも、そのせいかもしれないと思いながら、月明かりを映す荒川線のレールをしばしながめ、ゆっくり家路に着いた心豊かな夜でした。

おいしいお酒とお料理に出会う幸せに感謝して、乾杯!

蔵元の蛇足(この「居酒屋めぐり」を蔵元が読んで)

そうかぁ・・・・花街だったのかぁ・・・・何となく一種独特の風情が大塚にはありますもんねぇ。なんか、現代の東京じゃないような、懐かしい東京の姿。前に、串駒で閉店まで飲んでご主人の大林さんたちと近くのスナックにカラオケを歌いに行ったことがあります。深夜の大塚の東京とは思えない静かな雰囲気とちょっと裏寂れたスナックのたたずまいは「ここはほんとに東京だろうか?」と思わせるものでした。

ちなみに日頃、カラオケはほとんどやらないんですが、そのときは珍しく歌った記憶があります。大林さんに「もうちょっと修行が必要」と冷やかされましたが・・・・尤も彼は一曲も歌いませんでしたので実力は分かりません。おそらく似たようなもんじゃないかと推測しているんですが。

(蔵元 桜井博志 記)

ページのトップ
image
image

獺祭について

旭酒造について

製品について

飲める店・買える店

蔵元情報

image