大平由美の居酒屋めぐり

居酒屋めぐり

第五十九回 てしごとや 901

更新日:2015.07.22|居酒屋めぐり|

(東京・護国寺)

http://r.gnavi.co.jp/a2cz3etj0000/ (ぐるなび)
http://gokokujinavi.com/shop-office/shop/teshigotoya (護国寺なび)

 皆さん、夏が来ます! と、はしゃいでみましたが、東京の夏はけっこうきついです。もちろん、埼玉の夏、岐阜の夏、高知の夏が苛烈なことは承知の上で、敢えて申し上げたいのです。アスファルトとエアコン室外機によって予想以上にヒートする東京の蒸し蒸し度といったら……。読むだけで暑くなるからやめてくれ、というお声が聞こえてきそうです。恐縮。でも、そんなとき、行けばいい場所、ありますよね。そう、それはビアガーデンですっ!!!(キンキンに冷えたビール、想像中)
今だから打ち明けますが、『獺祭』と出会うまで、どれだけのビアガーデンを制覇したことか。行けば必ず、ミニバケツほどある特大ジョッキ3杯は平らげておりました。ああ、懐かしい。それが今では、ビールはいらないかも、というぐらいの日本酒党となってしまったわけですが、夏の時期のはじめの一杯は、どうしたってビールが恋しい。それでノドを潤したら、すみやかに美味しい冷酒に移行できるお店がベストです。
長い長い前置きでしたが、今回ご紹介したいのは、ここぞという隠れ家です。しかも、そこは都会のオアシス! 緑豊かな護国寺を見晴らす、ビアガーデンともなるテラスのある「てしごとや 901」。さあ、入ってみましょう。

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獺祭メイン、そして選りすぐりのお酒たち

 江戸時代の5代将軍・徳川綱吉の生母、桂昌院の祈願寺として建立された護国寺は、真言宗のお寺です。その護国寺がある交差点に面したビルの9階と10階が「てしごとや901」。うっかり見落としてしまいそうなのでご注意あれ。入り口で靴を脱ぎます。店内はすべて個室で、お部屋ごとにデザインが違っていて楽しい。廊下や階段は心地よい絨毯張りで、靴から解放された足が喜んでいるのを感じつつ、この日は10階の個室にご案内いただきました。実は、ビアガーデンにもなるテラス席を希望していたのですが、日ごろの行いのせいなのか、大雨の予報が出ていたので、テラスの見える個室となりました。

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「てしごとや901」が素晴らしいのは雰囲気ばかりではありません。何より大事なお酒の品揃えが半端ではないのです。オーナーの金原さんによれば、お酒のチョイスはすべて店長の橋本さんに任せているとのこと。その橋本さんはソムリエの資格を持つワインのスペシャリスト。そんな店長にしっかり選別された『獺祭』は、タイミングにもよりますが、5種類以上は常時、オン・メニュー。もちろん、品切れもなしで嬉しい限りです。さっそく、『獺祭 スパークリング50』で乾杯です!

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たまには時の経つのを忘れてみましょう

 お料理は9種の前菜プレートからスタートです。旬の物をちょこっとずつ、つまみながらのお酒ほど楽しいものはありません。タケノコ、菜の花、フレッシュで糖度抜群のフルーツトマトなどが彩りよくて可愛らしい。こんな前菜なら、”おひとりさま”で来ても退屈なんてしなくて済みそうです。

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お造りはヒメジ、赤イサキ、カサゴの三種盛り。ここは『獺祭 磨き二割三分』を奮発します。ちょっと珍しいお魚たちなので、お店の方にご説明をお願いしました。ヒメジはキンタロウという別名を持つスズキ目の魚とのことで、聞くのも食べるのも初めてでした。なんでも15センチほどの赤魚で、『獺祭』の蔵のある山口県萩などでよく獲れるのだそうです。旨みがあって、お酒がするっと入ります。赤イサキは、イサキという名がついていますがハタ科のお魚です。こちらはあっさりした味わいで、シコシコした食感が楽しいです。もう一つはカサゴ。カサゴといえば唐揚げを連想しますが、大き目で新鮮なら、お刺身もいけるそうで、なるほど、優しい味わいでした。
お店自慢の手づくり豆腐には『獺祭 三割九分』を合わせます。藻塩とオリーブオイルが添えられていますが、このオイルはなんと柚子オリーブオイルなのです。オリーブの生っぽい匂いが適度に抑えられて和風の味に近づき、お豆腐にもお酒にもマッチしています。いい感じ。きんきのひもの、アワビのバター焼き、調子に乗って山形牛のステーキもいただきます。お酒は『獺祭 試』。二割三分に山田錦を精米する過程ではじかれたお米を使って、蔵人がその時々にチャレンジして醸すお酒ですが、14度とアルコール度が低めになっているので、お酒の進んできた後半は、このくらいが体のためにも良さそうです。飲み続けるための言い訳……ではありません。断じて……(自信なし)

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桜エビご飯、ハマグリのお吸い物もいただき、すっかり満腹……のはずが、デザートとなると胃袋が余剰スペースをすぐさま用意するのですから、わたしも女子のはしくれです。(苦笑) この日のデザートは、なんと『獺祭 酒ケーキ』。特別にご用意いただいたわけではなく、「てしごとや 901」では時々、登場するとのこと。干しイチジクとの相性がバッチリ。このイチジク、実は『獺祭 三割九分』との相性が抜群でして、以前、サンフランシスコのレストランで頼んだ、ホタテのカルパッチョの上にイチジクを添えたお料理と合わせて感動したことを思い出しました。

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ふと外を見るとすっかり夜。そして予報通り、大雨です。いつ降り出したのか、気づきもせず、食と酒の饗宴を楽しんでおりました。忙しい毎日、たまにはこんな日があってもいいですよね。次回は違う雰囲気のお部屋にしていただこうかな。皆さまも、心地良い空間でくつろぎながら、暫し、時の経つのを忘れてみませんか。

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オーナーの心意気~人を育て、そして海外へ~

 「てしごとや」の誕生は池袋東口店。それから神楽坂に「てしごとや 霽月(せいげつ)」、そして護国寺に「てしごとや 901」ができました。その間、「てしごとや」で修行した多くの料理人、マネージャーらが独立を果たし、それぞれの飲食店を営んでいるそうです。”人を育てるのが飲食店のオーナーの仕事”と言い切るオーナー、金原さんの心意気が素敵です。そして、そんな金原さんの次なる試みはニューヨークですでに始まっています。今年の2月に開店を迎えた「てしごとや ニューヨーク店」は、現在、アルコールライセンスの取得を待っているところです。アメリカという国は、アルコールにきわめて緩いように思われがちですが、飲食店、取り分け新規店へのライセンス認可のハードルは予想以上に高いものです。ライセンス取得まで、レストラン側はお料理の提供のみで、アルコール飲料は持ち込み制。お店にとっても、チップで生活を支えるサーバーにとっても厳しい状況といえます。オーナーの金原さんは、じっくり腰を据え、ニューヨーク展開を続けていかれるそうなので、これからも『獺祭』ともども応援したいと思います。

外は大きなバケツをひっくり返したような大雨……信号を渡った向こうの地下鉄の駅に行くまでにも全身びっしょり濡れてしまいそう。まあ、それも一興として、美味しく楽しかった時間の余韻にひたり、タクシーを待つことにいたしましょう。

今夜も素晴らしいお酒とお料理に出会える幸せに感謝して、乾杯!

蔵元の蛇足

実はアングロサクソンは人種的に酒に強く、少々の酒では酔っぱらわないんですが、そのため体のセーフティーネットが働きにくくアルコール中毒の割合が日本人などと比べて多いといわれています。そんなこともあって、欧米は社会的にものすごく飲酒に厳しいのです。たとえば酒瓶を袋等に入れず公に持ち歩くことさえ社会的に指弾される行為ですよね。

日本がそんなに厳しい社会でないのも酒飲みとして個人的には気楽とも思いますが、半面、おじさんたちの「まぁまぁ、一杯」のお酌の強要や、学生の一気飲み事件など見ると、日本人の酒の飲み方ももっと洗練させないと、アングロサクソンたちと、特にビジネスでは、対等に戦えないような気がしますね。

あれ、今回の蛇足は格調高いですね。書いてるほど立派な酒を嗜んでるんでしょうかねぇ? 蔵元は?!  反省、反省、また一杯。あれっ、半升飲んじゃった。

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