皆様、大変な時をお過ごしのことと思います。まさに人類にとって降りかかってきた危機。「日頃から危機に備えるのが経営者の仕事」とはわかっておりますが、恥ずかしながらこんなことが起こるとは思ってもいませんでした。
 
最初はただ、中国向け輸出の不調ぐらいでしたが、あれよあれよという間に世界中に飛び火し、日本国内も大変なことになりました。
 
獺祭にとっても大きな危機で、カッコ悪いんですが、オロオロしています。大事なお得意先である飲食店の皆様が、危機に瀕している。それは売り上げ減として獺祭にも降りかかってきます。ほんとに、いくつもいくつも飲食店さんのお顔が浮かんできますが、自分にもどうしようもないのです。もどかしいですがどうしようもないのです。
 
そして、農家の皆さんに思い至るとき、起こる影響に慄然とします。もちろん、先日のライブ中継でもお話ししましたが、今、農家のためにできることは、とにかくやる。お知恵を貸してください。
 
こんな中で思っていることがあります。
 
「こういう危機的状況の時は戦い方がある」「まず出血を抑えて、何とか生き延びる」(とにかく社員の雇用を守らなきゃいけないですから、本当にどこまで売り上げが落ちても耐えられるか、真剣に計算しました)
 
次に「自分たちが一番大事にしてきたことをさらに磨く」それは「少しでも美味しい獺祭を目指すこと」(その一つの表れがクラフト獺祭です。若い社員たちにチャレンジするチャンスと試練を与えて、酒蔵の総合的技術力の底上げを図る。おかげさまで、すでに2チームのクラフト獺祭が出来上がり、2チームの酒が発酵中であり、さらに6チームが発進待ちです。この10チーム20人以外にも最初の声掛けでは手を挙げなかったけど、やりたいと思っている、やれる能力がある、メンバーがまだいます。そうこうしているうちにもう一段若い社員も成長してきてエントリーの技術的ラインに達してくると思います。これらの若き力は、少しでも良い酒を目指すとき大事な基礎体力なのです)

(そして、この状況にともすれば隠れてしまいそうですが、「最高を超える山田錦」で造る獺祭、ただ今製造中です)
 
(そして、何より、磨き二割三分以下、普段の獺祭、よりおいしくなったと自負しています)(獺祭は相変わらず美味しい、と言ってもらうためには常に進化していないとダメなんです)
 
そして「決してぶれない」「ブランドを大事にしないと思われるところに出さない」(実は、今、いろんな取引のない酒屋さんや量販店さんから「獺祭を出さないか」という誘いがいくつも来ています。しかし、私は今まで大事にしてきた、酒に対する哲学の合う取引先とのみの商売をするつもりです)
 
と、いうことは「目前の売り上げを追わない」「耐える」(つらいですね。生き残ることと、ある意味、相反しますから。でも、このことこそ、長い意味での生き残りにつながると思っています)
 
そして「農家を大事にする」(これは、三方良し、にはならないですね。自分たちの生き残りを考えるとき、痛み分けにしかならないでしょうが、それでも努力します)
 
こんなことを思っています。
 
そして、日頃、獺祭をご愛顧頂いている皆様の元気なお姿や声に接することができます日を心待ちにしております。皆様、元気で生き抜きましょう。