皆様もすでにご存知かもしれませんが、山田錦を食米として食べて頂きたいとのことで販売を始めました。背景は、これまたよくご存じの通り、政府の緊急事態制限以降の純米大吟醸酒の需要の落ち込みです。この市場の縮小に合わせて、私どもも生産を調整せざるを得ません。

そこで問題になるのは山田錦の来年の需要です。今年の山田錦の購入数量がそのまま在庫として来年についていきますから、このままいくととんでもないことになりそう。冬場だけの酒造りをしている酒蔵においては、山田錦はすでに酒に仕込まれて、現時点では米の在庫はないかもしれませんが、その酒が売れなければ来年の仕込みを減らさざるを得ませんから同じことです。

昨年秋の全国の山田錦の総生産数量はざっと3万5千トン。米全体の総生産数量は730万トン弱ですから、その0.5%です。しかも日本の米の中で一番高価と言われる山田錦です。私一人が騒いでもただの遠吠えかもしれませんが、日本の農業全体から見たら、決して座視できない数字です。

私共も、山田錦の需要を確保するためにはとにかく自社の売上を上げることが一番の近道ですから、何とか獺祭の売上を守るべく、じたばた努力しているんですが、なんといっても首都圏市場が全く止まり、全国の飲食店さんが休業などに追われている状況で私どもだけの力では及ばないのです。

そんな中で、「名古屋の有名な酒蔵である九平次さんが山田錦を食用で販売する」というニュースが飛び込んできました。「これだ!これ!!」思わず、我が膝を叩きました。そこは、「パクリの旭酒造」、蔵元の久野さんにも「うちでもやらせてください」と仁義を切らせてもらい、山田錦の販売がスタートしました。(久野さんも理解してくれましたし、「同じ2kg単位では売らない」と聞いて少しは安心したみたい)

そんなことで始まった山田錦の販売。素人の米屋ですから、行き届かないことが多いかもしれませんが、私どもの気持ちをご理解いただいて、ご用命いただければ幸いです。