前回の蔵元日記【酒飲みの達人】 https://www.asahishuzo.ne.jp/diary/004638.html を読んでいただいた方で、「なかなかここまでできなくて」と言われる方のために、蔵元が勝手流ご指南を。

やはり、栓を開けた後はお酒の酸化は進むばかりですから、一升瓶の購入は3~4日で飲みきる自信がなければできれば避けていただきたいところです。720mlとか300mlなどの小瓶が、瓶内酒の液面が酸素に触れる面積も小さいですからお奨めです。

飲み終わったお酒は冷蔵庫に。(この時、一升瓶ですと、冷蔵庫に入るかもしれませんが、「あれも入れなくちゃ。これも入れなくちゃ」と考えている相方と深刻な場所取り戦争が勃発しそうです。そして当然のことながら私たち酒飲みチームのみじめな負けになりそうです)この面でも小瓶が良いですね。

それでも小瓶と比べて一升瓶は割安じゃないか、と言われる方も多いのですが、品質の面からいうとそうとも言い切れません。居酒屋さんなんかで獺祭を頼んで、「あれっ」と思うことがあります。一本目を、首をかしげながらそれでも何とか飲んで、二本目を頼むと「あぁ、よかったこれが本来の獺祭の味と香りだ」と思うことがあります。

つまり、一本目の時と二本目の時のボトルが変わったんですね。最初のボトルは瓶の中に少ししか残ってない状態で一定時間経過していた。二本目のボトルはその時口開け。

会社でやってみている実験でも、たとえ冷蔵庫に入れているとしても一合しか残っていない一升瓶を一週間以上置いておきますと、明らかに中のお酒は酸化しています。冷蔵庫に入れておいてこうですから、常温においておけばどうなるかご想像の通りです。

だから、一升瓶から家庭で飲まれる(良い酒は)のは、かけたお金と品質のバランスから考えるとコスパが悪いのです。

ということで、小瓶を買っていただくことをお勧めします。その時、300mlではやはりちょっと小さすぎると720mlを購入されたとして、初日はそのまま楽しんでいただくとして、残った酒はどうする?

ここはこのまま冷蔵庫に入れちゃいましょう。この前のお便りいただいた方のように180mlに移し替えると満点ですが、そこまでできないのも悲しき凡人の性です。(いえ、これこそ多数派酒飲みの姿だ、と勝手に胸を張っちゃいましょう)

ただ、この時、お願いがあります。できるだけ同じお酒を飲みきってほしいんです。なんとか一週間以内には。特に、最後に0.5合分ぐらい残って長期間冷蔵庫に滞在なんて状態が一番危険ですから、その場合は必ず翌日には飲んでいただけると美味しく楽しめると思います。

それでもこんな状態で一定期間残ってしまう。まあ、ワインも焼酎も飲まなきゃいけませんしね。休肝日もありそう。それに帰る途中で酒屋によったら「東洋美人」と「開運」を勧められちゃったし。「うまそうだからこれを今日飲みたいな」なんて。

と、いうようなことは人生には大いにありますよね。そんな場合は残ったお酒は料理に使っていただく。良いお酒を料理に使うともったいないという方がいますけど、やはり良いお酒は料理に使っても良いものです。それとお刺身なんかの付け醤油。私は山口県生まれのくせに地元風の甘い醤油が苦手で、甘くない醤油を探すようにしていますが、そうすると今度は辛すぎる。こういう時重宝しますね。三分の一ぐらいこんな残った酒を混ぜてしまう。新鮮な白身なんか絶対相性抜群ですね。

こんなことで、達人になりきれないゆるい酒飲みの私たちも楽しく美味しい人生を楽しめると思います。人生は楽しくなければもったいない。たとえ、コンビニで買ってきたお惣菜を手近な皿に移し替えただけでも、美味しいお酒とお気に入りの酒器が隣にあれば心豊かな食卓になりますよ。

【米ぬかが足りません】

ところで米ぬかが足りません。蔵内平均で35%まで米を磨く、つまり約6千トンの米ぬかを造る旭酒造が4月5月と酒の製造量を半分に落としたんですから、足らないのは当たり前ですね。

獺祭の米ぬかは多くはみりんなどの原料に大手の食品メーカーさんに引き取ってもらっています。ありがたいことに近年、山田錦の米ぬかの食品原料としての優秀性がやっと理解されたようで、以前の三倍以上の単価になっています。山田錦は捨てるところがないんですよ。

ありがたいことですが、それにしても玉がない。