大平由美の居酒屋めぐり

居酒屋めぐり

第十六回 『六雁』 東京都(銀座)

更新日:2008.09.22|居酒屋めぐり|

六雁HPは ⇒ http://ponygroup.com/mutsukari/

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六雁という字体が美しいエントランス。

今回は、東京ミシュランで星ひとつに輝いた創作料理の「六雁」です。 伝統と革新が凌ぎを削る和食の世界で、日本のみならず世界中から注目 を集めている秘訣はなんなのでしょう。それを知りたくて伺いました。 晴海通りから並木通りにまがってすぐのところにあります。でも、気を つけて。看板らしい看板はないといっていいでしょう。控えめな「六雁」 というお店の名前を見過ごさないように。

 

六雁への旅

エレベーターまで歩く間から、すでに「六雁」への旅ははじまってい ます。そこはかとなく漂ってくるお香の香り・・・・・・エレベーター 内の質感あるデザイン・・・・・・6階に着いてドアが開いたときに目 に入ってくるすべてが、それまでわたしが持っていたはずの現実的な感 覚を取り払っていくかのような心憎い演出がすばらしい。迎えてくださ るスタッフの方たちの物静かでいて暖かみのある応対で、旅への期待は さらに高まっていきます。

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6階カウンターからのぞんだオープンキッチン。
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シェフの目線から見たテーブル席。

 

お料理とお酒のおいしい関係
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シックで重厚な装いの7階席。

日本食にワインやシャンパンを合わせるようになったのは、いったい いつ頃からなのでしょう。名だたる老舗の和食店には、日本酒よりワイ ンを全面に押し出しているところも多く、日本酒党のわたしとしては、 少々、寂しい思いをすることも。ここ「六雁」も、ワインやシャンパン が充実しているのですが、嬉しいことに、日本酒の品揃えにも力が入っ ています。客の要望に添って、たとえば乾杯には○○、お造りには○○ と、お店側の推奨ラインアップがメニューの下に提案されているので、 銘柄などがわからなくても心配はいりません。通常は日本酒のライン、 焼酎のライン、ワイン・シャンパンのラインと3種類だけだそうですが、 この日は特別に、献立に合わせて日本酒とワインをミックスしたライン アップをお願いしました。

まずは『獺祭・磨き三割九分 発泡にごり』で乾杯。とろろ豆腐、鱧 肝の生姜煮、アスパラの茶豆和えの前菜、鱧とじゅん菜の煮物椀をいた だきました。素材の味がしっかりと生きていてしかも手の込んだお料理 に、繊細な味とキレのある三割九分のにごり酒がよく合います。 次のドリンクは『シャブリ2006ジョゼフ・ドルーアン』。大きな大きな お皿に絵画のように盛られた、まこがれい、あおり烏賊、鱧のお造りと 合わせていただきます。ほのかで爽やかな酸味は白身のお魚といい関係 にあるのだなと実感。お料理とお酒って、それぞれが持ち味をいかんな く発揮してはじめて結ばれ合う関係なんですね。人と人も、こんなふう にコミュニケーションできたら最高なのにと思っているうちに、目の前 に昔懐かしい削り器が出てきました。小さいころ、祖母の手伝いで朝ご はん用のお味噌汁のだし作りに、かつおぶしを削ったことを思い出しま す。削りたてのかつおぶしが野菜の吹き寄せにふわっと乗せられる様の 美しさ、こうばしい香り、お野菜の彩りの豊かさにうっとりしてしまい、 お箸でくずすのがもったいないような・・・・・・。野菜の吹き寄せは 六雁の定番料理で、どのコース料理にも組み入れられているとのこと。 納得です。 次は『ニュイ・サン・ジョルジュ 2004 フェブレ』というブルゴーニ ュ地方の赤ワインへと進みます。このワインは濃厚で飲み応えがあり、 鴨ロースや牛フィレの串揚げとの相性が抜群でした。 「別腹ってどこにあるの?」というキャッチコピーがかわいらしいデザ ートは、かき氷、パッションフルーツのゼリー、そして駄菓子のいろい ろ。ポートワイン『フォンセカ』と貴醸酒の『花垣』を飲み比べるエン ディングまで、食と酒の饗宴は続いたのでした。

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旬の食材の饗宴。
ケーキのように繊細で愛らしい。
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お造り デザイン画のようで
食べるのがもったいないほど

 

本気度と遊び心

「六雁」という店名は、日本神話に登場する磐鹿六雁命(いわかむつ かりのみこと)という日本料理の始祖にちなんでつけられたとのこと。 野菜料理にしてもお魚、お肉料理にしても、練りに練ったうえでその一 品が生み出されたという本気度とお客を楽しませる遊び心が自然に受け 手であるわたしに伝わってくるお店でした。 イチョウの木と御影石のカウンターの向こうに、きびきびと、黙々と、 整然と、それでいながら、どこか楽しげに軽やかに働く料理長をはじめ としたスタッフの方たちにも、やはり本気度と仕事を楽しむ遊び心を感 じました。そういえば、『獺祭』の蔵元、旭酒造にうかがったとき、そ こで働いていた社長と社員さんたちを見たときの印象も同じものでした。 知りたかった人気の秘訣が、わかったような気がします。わたしたちに 楽しくて幸せな気持ちをもたらしてくれる“本物”に出会えた夜でした。  旅の終わりは寂しいものですが、六雁への旅を終え、エレベーターを おりて現実の世界に戻ることに、わたしはなぜか、ワクワクしていたの でした。

今夜も素晴らしいお酒とお料理に出会える幸せに感謝して、乾杯!

蔵元の蛇足

さすが六雁、最高の賛辞が続いてますね。で、なるほど。泡モノとして 発泡にごり酒を飲んで白ワイン、続いて赤ワイン、最後に花垣の貴醸酒 とポートワインでしめたんですね。でも、僕なら最後のポートと貴醸酒 以外は獺祭だな。前菜からお刺身あたりまで磨き二割三分、野菜の吹き 寄せは三割九分、串揚げは発泡にごり酒で行きたいですね。尤も、獺祭 の当主の意見ですから割り引いて聞いてくださいよ。
お店で、「お飲み物何にします?」なんて聞かれて、「お店のお勧め」と 答えると・・・・・・、ご主人とかソムリエさんとか緊張するでしょ。 いやですよねぇ、そりゃ。で、そのときさらに続けるのが、「どうせ、 本心は獺祭が一番美味しいと思ってんですから、大丈夫ですよ。何、持 ってきたって。」
また、よく聞かれる「どんな料理に合わせて獺祭を造ってますか?」とい う問いに、「考えるわけ無いじゃないですか。一番美味い酒を造ろうと 思ってんですから。料理に獺祭を合わせるんじゃなしに獺祭に料理を合 わせてくださいよ。」
うーん、書きながら、やなやつ。こうなるから蛇足は三行ぐらいと大平 さんから最初にリクエストがあったんだな。

(蔵元 桜井博志 記)

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