大平由美の居酒屋めぐり

居酒屋めぐり

第五十回 岩国をめぐってきました!

更新日:2013.02.21|居酒屋めぐり|

 2006年の秋にスタートした「大平由美の居酒屋めぐり」が、ついに50回目を迎えました。ただただ『獺祭』が好きで通い続けてきましたが、多くのお店に伺いました。実のところ、連載をはじめた頃は、『獺祭』を置いているところを探すのも一苦労でしたが。さて、記念すべき50回目。せっかくですから、いつもと違うところに行きたいものです……はてさて、どこに行きましょうか……考えた末、『獺祭』の生まれ故郷であり、現在も日々、日本はもとより世界じゅうの『獺祭』愛飲者に向けて蔵人たちが丹精込めて醸している≪岩国≫を訪れることに決めました。昨秋に稼働を開始した旭酒造の新蔵も見学したいと思っていたのです。ANAによる羽田~岩国線が就航したことで、東京からのアクセスはぐっと便利になっています。昨年の12月には、岩国線就航記念として、国内線すべての機内で『獺祭 純米大吟醸 三割九分』が販売されていたそうですが、好評のうちに販売を終了。今回、残念ながら機内で『獺祭』を楽しむことはできませんでしたが、芦ノ湖や紀伊の山々、瀬戸内海を眼下に90分の空の旅を楽しんでいるうち、あっという間に岩国錦帯橋空港に到着しました。この日のお店は、岩国市元町にある「山陽亭」というお寿司屋さん。夜までは少し時間があったので、空港からバスで錦帯橋に寄ってみました。春なら桜、夏なら鵜飼(6月~9月)、秋なら紅葉でにぎわう錦帯橋も、底冷えのするこの季節はさすがに閑散としていましたが、それも旅の一興と、橋の歴史を思いながら暫しの散策を楽しみました。

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地元の海の幸をリーズナブルに!!

 初めて訪れた町で、駅前やショッピングモールなどに入っているお店でもなくチェーン店でもない、なんとなく地元の人たちだけが行きそうなお寿司屋さんののれんをくぐるのは、けっこう勇気のいることです。でも、断言します。「山陽亭」は大丈夫。おっと、もちろん満席でなければ、のお話ですよ。ちょっとシャイですがノリだすと実におもしろい大将、山本さんのお仕事を拝見できるカウンターに座り、本日オススメの地のものを伺ってみました。間髪を置かずにお答えが返ってきました。それは、瀬戸内で取れたミズイカ! イカはわたしの大好物。透き通るような身がなんとも美しい。新鮮なんですね。かむと、イカの甘みと旨みがじわーっと出てきます。お酒は『獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分』を合わせます。ミズイカの品の良さをさらに引き立てる完璧なバランス! 幸せ感が身体中に広がっていくようです。「山陽亭」では二割三分がグラス一杯、945円というリーズナブルな値付けで提供されているので、安心しておかわりをお願いできそうです。

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 さらに地のものをいただきましょう。よりエビというやはり瀬戸内のエビを手でむきながらいただきます。ほんのりした香りと甘みがあって実にいい感じ。酒飲みにはこういうものがありがたいんですよねぇ。そして黒メバルの煮つけ、カキフライ、銀杏とどれも『獺祭』とよく合うお料理で、どんどんいい気分になり、実は警察グッズコレクターという大将の楽しいお話に心もほぐれていきました。

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きわめつけはサザエのつぼ焼き。ほんの少しですが、贅沢にも二割三分をかけて焼いていただきました。これぞ至福。握りの前にすっかりお腹がいっぱいになってしまいそう。笑

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 はじめに感動したミズイカ、瀬戸内海のヒラメ、赤貝など、数は少量でしたが厳選したネタの握り。美味しいっ! やっぱりお寿司屋さん「山陽亭」の一番は、握りでした。「山陽亭」はお料理のみのお任せメニューが4~5千円。お会計のときにドキドキしないで済むお店は最高です。ありがとうございました。ごちそうさまでした。

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旭酒造の蔵見学

 翌日は、滞在していた岩国から岩徳線に揺られて周防高森駅へ。ここが旭酒造の最寄り駅です。とはいっても、駅から蔵までは車で15分近くかかります。皆さま、見学にお出でになる場合は、この長い道のりへの覚悟と予約のお電話、忘れずにお願いいたします。
さて、まずは周防高森駅から徒歩圏内の精米工場からスタートです。現在、8台の精米機が休むことなく稼働、山田錦が23%まで磨かれておりました。この日は冷え込みが特に強かったのですが、精米するのにいいからと、工場内の天窓はすべて開け放たれていて外気と同じ気温でした。おー、寒いっ。美味しい酒を造るためなら何でもする旭酒造。さすがです。付け加えて、たくさんのお米を扱っているのに、床にはお米ひと粒、落ちていないというクリーンさには驚きました。精米担当の蔵人さんのお仕事ぶりに感動です。

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 さあ、楽しみにしていた新蔵です。と、ここで訂正です。新蔵、新蔵と言っていますが、実は煉瓦色の真新しい蔵は第二蔵となり、3年前に完成した一号蔵の斜向かいに建っているのです。現在は『獺祭 純米大吟醸 50』の一升瓶だけを製造しており、この日もフル稼働。真新しい機械が並ぶ中、必要な手作業は確実にみっちり、黙々とこなす蔵人さんたちの姿を見ていると、自然とこちらの背筋も伸びてくるのでした。

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一号蔵にある麹室(こうじむろ)も見せていただきました。蔵全体が巨大冷蔵庫となっているので、室に入ると暖かくて最初、ホッとします。でも気温はなんと38度。見学者には快適でも働く人々にとってはけっこうきつい環境です。そんな中、麹担当の蔵人さんたちが、蒸しあがった山田錦を台の上に手早く均等に薄―く広げていきます。麹菌がまんべんなく米粒のひとつひとつに付着するように、まるで思いを込めているかのように。そう、麹は酒造りの命とも言われていますから真剣勝負なのです。出来上がった麹米は、栗のような香りと味がしました。

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どこまで洗練されうるか

 蔵見学のあとは、岩国では知る人ぞ知る「寿司処 澤」に伺いました。7席のみのカウンターに席を取り、『獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分』をお願いします。まずはじめに、ふっくらと暖かい鱈の白子が出てきました。口の中でとろけつつ上品な旨さをしっかり主張するその味わいは、『獺祭』と美しいハーモニーを奏でるかのよう。ハタの一種である白身のお魚、あこうのお刺身、しめ鯖、トリ貝に鮟肝、イカの胆焼きなど、工夫されたお料理が次々と饗され、『獺祭』とともにするり、するりと入っていきます。とにかく、お料理もお酒も、どこまで洗練されうるかを追求していることが伝わってきて感動的! そして握りは、あこう、アジ、穴子、大トロ、小肌、ハマグリ、剣先イカ、イクラ……日本人に生まれて心底良かったと思う夜となりました。残念だったのは、「寿司処 澤」が取材NGということ。お店の外観とネタのショーケースだけは許可をいただいたので、なんとかお察しくだされば幸いです。

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『獺祭』に出会ってから10年以上がたちました。何度か蔵を訪れていますが、そのたびに『獺祭』の進化、働く人々たちそれぞれの進化を感じます。そして良いもの、美味しいものをひたすらに追いかける痛切なほどの熱意が伝わってきます。これからも、美味しく、ありがたく、『獺祭』を楽しんでいきたいと思います。

今夜も素晴らしいお酒とお料理に出会える幸せに感謝して、乾杯!

蔵元の蛇足

こんなにほめられちゃうと、例によって、「豚もおだてりゃ木に登る」状態になるわけですが、まあ、私たちにとって、美味しい酒を造ることに痛切なほどの努力をするのは当たり前のことで、美味しくない酒を造ることが犯罪と思っていますから。

以前に、あるえらい先生から「山田錦を23%まで磨く国賊のような酒蔵があるが」と蔵元と酒販店の勉強会で話されているのを聞き、「何と言われようと美味しい酒を目指して、突っ走る以外に自分たちの生きる道はない」と、一人会場の隅で、思ったことを思い出します。

いけない!!!! 蛇足が真面目にかっこよくなりすぎている。
それでは、次回を楽しみに。

今度はどんなお店でしょう。

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