大平由美の居酒屋めぐり

居酒屋めぐり

第五十六回 円山町わだつみ (東京・渋谷)

更新日:2014.06.06|居酒屋めぐり|

円山町わだつみ
http://wadatsumigroup.com/

 若者の街、日本を訪れる外国人が必ずといっていいほど訪れる街、渋谷。駅前のスクランブル交差点を渡る人は、1日に何人ほどいるのかが気になるところです。とにかく渋谷は人通りが多く、飲食店が無数に存在するのではないかと思えるほどで、東京育ちのわたしでも、クラクラしてしまうようなある種の熱を、この街は発していると感じます。その渋谷で今回、伺ったお店は、道玄坂をのぼって円山町界隈に入り、その真っ只中のところにあります。かつて花街として栄えていた円山町、今ではネオンきらびやかな○○ホテルが立ち並ぶあの地域に分け入っていくのに、抵抗、あるいは勇気が必要だと思っていらっしゃる方も少なくないのでは? でも、円山町は変化していますよ。たくさんのライブハウス、おしゃれなレストランが次々とオープンしているのです。夕暮れ時、その円山町に60年前に建った置屋を改築して2013年10月に全面オープンした「わだつみ」に伺いました。

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日常を離れて旅をする

 目指す入り口を見つければ、そこから「わだつみ」のお楽しみが始まります。灯籠が足元を照らす回廊は、日常から非日常への一本道。のれんをくぐって大人だけがくつろげる懐かしい空間への旅に出ることにいたしましょう。

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店内は母屋と離れに分かれています。母屋の中も、テーブル席のあるメインスペースと白木の寿司カウンター、鉄板焼きカウンターとに分かれているので、人数、食べたいものによって自由に選ぶことができます。寿司、鉄板焼き、懐石……店内を見せていただきながら、わたしの心の中ではすでに食の旅がスタート。全部、味わいたいところですが、この日は寿司カウンターにおじゃますることにしました。6席のみというプライベートな感覚でゆったりとお食事が楽しめそうです。

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旬の食材と基本の出汁に創意工夫を込めて

 寿司カウンターのコース料理は、大将のにぎりお任せコース。お酒はまず、『獺祭 スパークリング50』です。「わだつみ」亭主(マネージャー)の黒田さんがお注ぎくださいました。ミルフィーユ仕立ての春のお浸しとともにいただきます。下に黄ニラ、帆立、菜の花、うるい、オカヒジキへと層になったお浸しに、日本の春の豊かさを感じます。春野菜はほんのりとした苦味と新鮮さが特徴ですが、これが獺祭のスパークリングとよく調和し、すがすがしさをかもしだします。いい感じ。次は、ホワイトとグリーンの2種のアスパラを、昆布出汁の味わいが活きているズワイガニのジュレが見事に演出した一品。さらに蛤の茶わん蒸し。とろっとした青のりの餡が絶妙で、これまたお酒が進みます。今が旬の食材をふんだんに使い、日本料理の基本の出汁でお料理されているのですが、随所にキラリと既存にとらわれない新しい工夫がなされているのが「わだつみ」の料理であるとおっしゃったのは料理長の小島さん。美味しいです。それが何よりです。ありがとうございます。

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さて、次のお酒は『獺祭 純米大吟醸 磨き三割九分』。おちょこは好みのものをチョイスします。錫のおちょこを選んだのは口当たりがひんやりして気持ちがいいのが理由です。そしてお造りは、沖縄でとれた生のマグロ、こち、シマアジ、しめ鯖、湯葉などがこんもり盛られていてため息がもれるほど。三割九分のバランスの取れた旨み、甘みと引き立て合って、”ああ、美味しい”と、思わずつぶやいて……あ、ツィッターではなく、肉声で……しまうのでした。

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コース料理はさらにさらに、鰆の木の芽焼、タケノコの蕗みそ焼き、桜エビのてんぷらと新じゃがのクロケットと続き、『獺祭 三割九分』のおかわりをお願いしたのですが、”すみません、切れてしまいました”とのこと。最近、よくあるんです、『獺祭』ソールドアウト。でも大丈夫。「わだつみ」にはほかにも選りすぐりの日本酒が揃えられていますから。ということで、これはお食事にしなさい、ということですね。いよいよ、〆のお寿司の出番です!

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カウンターの向こうのエンターテイナー

 スィーツは別腹と言いますが、わたしはお寿司こそ別腹だと思っています。もうお腹いっぱい、無理かも、と感じていたのに、カウンターの向こうから大将の馬場さんが寿司ネタを見せてくださったときには、こう言っていました。 ”イカとタイ、ウニに沖縄の生マグロに、アナゴもほしいしやっぱりイクラも。あ、巻物のおススメも!” われながら、すごい。でもこれは、お寿司が美味しいからというだけではないのかもしれません。ネタの仕入先や仕込みのコツなどを笑顔で説明してくださる馬場さんとの会話が楽しくて、食もお酒も自然に進んでいくからなのでは。どんなに美味しい食べ物でも、一緒にいる人、そこでの話題が楽しくなければ食欲も失せてしまうというものです。懐石料理でもお寿司やさんでも、カウンターの向こうの料理人さんは、包丁さばきや料理の巧みさ、美しい盛り付けのみならず、知識と話題の豊富さでわたしたちを楽しませてくれるエンターテイナーなんですね。そう、「わだつみ」には、お楽しみがあふれていました。お店を出たころには夜も深まっていたのですが、渋谷駅に向かう通りには、まだまだ夜はこれからとでも言うかのようなエネルギーが残っています。もう少し若かったら、『獺祭』を求めてもう一件、だったろうなと思いつつ、帰路に着いたのでした。

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今夜も素晴らしいお酒とお料理に出会える幸せに感謝して、乾杯!

蔵元の蛇足

いかがでしたでしょう。実はこの店、知る人ぞ知る美人利き酒師Fさんに教えて頂いたのですが、大正の香りの残る民家を改造したものです。そのセンスに脱帽。

今度パリにオープンする獺祭パリ店の建物は19世紀の建物で、そんな古い建物を改造しながら使い続けるフランス人の自分達の歴史に対する自信と執着、そしてそのセンスに圧倒されるところですが、(ちょっとケチにも)、でも、こんな店を見ていると、日本人も負けていませんね。

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