大平由美の居酒屋めぐり

居酒屋めぐり

第五十七回 京料理 熊魚庵たん熊北店  東京ドームホテル店 (東京・水道橋)

更新日:2014.10.16|居酒屋めぐり|

http://www.tokyodome-hotels.co.jp/restaurants/tankuma/

 朝食は薄めのトーストとヨーグルトにコーヒー、昼頃になったらカフェでランチ、夜はイタリアン……と、そういう日々を普通に何気なく送っているわたしたち。ユネスコ無形遺産に登録された和食ですが、一週間に何回、和食を口にしているのだろうと、ふと考えてしまうことがあります。『獺祭』をこよなく愛しているわたしでさえ、です。おにぎりだってラーメンだって和食でしょ、と、言えなくもないのですが、時には「ああ、これが和食」と実感したいと思い、水道橋の東京ドームホテルに、2000年のドームホテルオープンと同時に開店した「京料理 熊魚庵たん熊北店」に伺いました。実は自宅から歩いても2、30分ほどの距離なのですが、こちらのお店に伺うのは初めてです。楽しみです。店名に’熊’と’魚’……どういう由来かお聞きしました。「熊魚庵」は、ゆうぎょあん、と読むのですが、これは、鯉のくちびると熊の手は最高の珍味であるという意味の中国の鯉唇熊掌(りしんゆうしょう)という古語にちなんだもので、こちらの店名は、天龍寺の官長さんに命名していただいたそうです。そういえば、『獺祭』も中国の古語ですよね。ご縁を感じます。『獺祭』は、50、二割三分、その先への3種類がオン・メニュー。今回はたくさんの写真とともにご案内いたします。 

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開放感と閑静が調和する店内

 とにかくドームホテルの3階すべてを使用した広さに驚嘆しました。昼は突き抜けたように明るくすがすがしいのですが、夜は深い奥行を持つ落ち着いた空間に変化します。店内は、右手に「すし」「天婦羅」「鉄板焼」の専門コーナーがあり、中央は本格懐石から気軽に一品料理までいただける和食ダイニング、さらに左手にはそれぞれ趣向が凝らされた個室の数々が配されています。迷子にならないようにしなくては! そんな訳で、ご馳走の前に、ささっとひと回りさせていただきました。

まずは「すしカウンター」
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「天婦羅カウンター」はすでにお客様がいらしたので看板のみ
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遊園地が窓辺に広がる「鉄板焼カウンター」
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人数、ご希望に応じた様々なタイプの個室
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お茶室
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今回わたしは贅沢にも、「浮舟」という広々したお部屋に通していただきました。お料理も、各コーナーからおススメを「熊魚庵」の社長室長、安藤さんにアレンジしていただくことに。わくわく。どんなお料理からはじまるんだろう。器や盛り付けなどを自己流で想像するのも楽しいし、それがいい形で裏切られるのも面白いもの。お料理屋さんでのこの瞬間が、なんとも言えず好きです。

手を加えず食材の味を伝えるということ

 お酒は『獺祭 磨き二割三分』をお願いしましょう。酒器はすがすがしい透明なお猪口にしました。
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そしていよいよお料理のはじまりです。
まずは、松茸とほうれん草のお浸し。なごりハモ(ハモの終わり)に合わせた一品。香りと味わいのバランスが絶妙で、二割三分の上品な甘み、馥郁として香りと相まって、”ああ、美味しい”と思わず言葉がもれてしまいます。
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ハモ水仙。アワビ、エビ、ずいき、おくらとあしらい、ハモの骨を焼いたお出汁をジュレにしたものが添えられています。
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お造りはふっこ(スズキの子)の昆布〆め、炙り貝柱、つまの野菜にはオニオン・ドレッシングがほんのりかかっています。
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カマスの塩焼き。添えられた花豆は軽井沢から。(万平ホテルにも支店があるからだそうです)
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宮崎県産A5級牛のヒレ、炭火焼で。
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3種のお塩で楽しむ天婦羅。
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どのお皿も、堪能いたしました。『獺祭』がどんどん進んで、ちょっと怖いくらいです。(汗) えっ、いつものことだろうって? はい、おっしゃる通り。(さらに汗)

「熊魚庵たん熊北店」のお料理のテーマは、茶道のこころを忘れずに食して美しく、四季折々旬の食材をなるべく手を加えずそのままの持ち味をお客様に伝えようというものと伺っています。ふーむ、これを手を加えずとは……。丁寧に、入念に、ぎりぎりのところまで手を加える、それを、なるべく手を加えずに、とおっしゃるのだと思いました。ぎりぎりがどこなのかをしっかりと見切ったお仕事なのだと。

おすしと甘味(くずきり!)がこれまた美味。「熊魚庵たん熊北店」の和食には、おもてなしのこころがいっぱい詰まっていました。大切な人を誘いたくな
る、そんなお店です。

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和食と日本酒 文化と変化

 たとえば、この酒には文化がある、とか、この酒蔵には文化がない、とか、
この料理には文化がある、とか、この店からは文化を感じない、とか……よく聞きます、この言葉たち。よく見かけます、こういった文章。発言する人たち、ものを書く面々、わたしも含めて、軽く扱ってしまいがちな’文化’という言葉ですが……そもそも「文化」とはなんぞや。辞書によれば、文化とは、人類がみずからの手で築き上げてきた有形、無形の成果の総体のこと。そのうち、精神的所産が文化で、物質的所産を文明ということが多いそうです。世代を通じて伝承されていくものが文化とも記述されています。
なるほど、伝統的なお料理には、確かに優れたところがたくさんあります。守るべきものも多いです。でも、昔ながらの方法が、必ずしも最高ではないかもしれない……素材を工夫し、アイティアを絞り、変化させることに挑戦するのも、和食と日本酒が歩んできた歴史であり、それを文化といってもいいのではないでしょうか。そもそも日本人は、古いものをそのまま伝承、継承するというより、常により良いほうへと手を加える性格を持っていると思われてなりません。ハモの骨を焼いてスープを取ってジュレにするなど、日本人にしかできそうにありません。お酒もまた然り。『獺祭』の今があるのも、そこに文化と変化があったからこそ。
がらにもなく真面目な考え事をしながら外へ出ると、東京ドーム、ラクーアのデコレーションが目に飛び込んできました。

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今夜も素晴らしいお酒とお料理に出会える幸せに感謝して、乾杯!

 

蔵元の蛇足

今回は、何もありません。美味そう。今度、みんなで行きましょう。奢ってくれればなお良し。

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