大平由美の居酒屋めぐり

居酒屋めぐり

第五十八回 安兵衛

更新日:2015.04.27|居酒屋めぐり|

(東京・新宿~思い出横丁)

http://www.shinjuku-yasubee.com/

 いやぁ、懐かしい場所に行ってきました! もう数十年昔になりますが、バイトと部活に明け暮れていた学生時代の春と秋、神宮で大学野球を応援した帰りに毎年、通っておりました。そして次は子育てが一段落し、わたしにできる仕事が何かないものかとあがいていた時代(やっぱり数十年前…汗)、友や先輩後輩たちと、はたまた講師や夢を追う仲間たちと、この横丁にお世話になったものでした。だって、安くておいしくて、ワイワイうるさくしてもなんの気兼ねもせずに何時間でも粘れるんですよ……おっと失礼。と、郷愁に浸るなか、ずいぶん印象が変わったような気も……すっかりきれいになっているし、しかも、あの頃とは呼び名が違うではないですか。確か、当時は◯ょ◯べ◯横丁と言っていたのですが……(←訂正してお詫びを。当時の正式名称は、”焼き鳥横丁”だったそうです……またも汗!!!)

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47都道府県の地酒、置いています!

今回、伺ったお店は、戦後間もない、まだ闇市があった昭和25年に、ここ”思い出横丁”に創業したという「安兵衛」です。今では全国の地酒を置いているという居酒屋さん、時おり見かけますが、実は「安兵衛」はその先駆け。日本地図に各地の地酒を配してお客様にアピールする看板もオリジナルで作られたそうです。お店の入り口のわきに、『獺祭』が山口県のお酒としてドーンと表示されているのは、わたしもやっぱり嬉しい。日本全国から東京に出てきた人々が、新宿の線路沿いの通りを歩き、故郷のお酒の名に接して、暫し、生まれ育った町に思いを馳せる……そんな光景が浮かんできます。

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店内はカウンター席とテーブル席、個室もある1階(全部で46席)と、パテーションで区切れるようになっているテーブル席30席からなる2階に分かれています。わたしは1階の個室に通していただきました。セットされている箸置きは徳利の形で、銘酒居酒屋としての雰囲気を醸し出しています。盛りだくさんのメニューは、季節の旬を取り入れて工夫されており、どれも美味しそう。
『獺祭』は、すでに12年ほど前から置いていたとご主人の丸山さん。ここ数年は品薄で苦労されているとのことですが、昔からの人脈を駆使してなんとかメニュー上に保ってくださっています。それも50、三割九分、二割三分の3種類。迷った末に、三割九分をチョイス。どこの居酒屋に行ってもメニューにあれば必ずお願いするポテトサラダ、そして今が旬のそら豆、これは三割九分に絶対に合うと確信している焼きハマグリからいただくことにしました。

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新宿で生き残りをかける3代目!

 子どもの頃、ポテトサラダは嫌いでした。好物の肉料理のとなりに、まるで規則のように刻んだキャベツと一緒に出てくることに抵抗があったし、何よりもご飯に合わないじゃないですか。それが、大人になって酒飲みになった途端に都合よく嗜好がガラリと変わり、今や、居酒屋さんごとの独特の味付けを試さずにはいられないほどに。そして、ポテトサラダって、日本酒に、『獺祭』に合うんですよ。マイルドなお芋の甘さとマヨネーズのほのかな酸味にすっかり胃袋が刺激されてしまいました。さあ、お料理を追加していきます。「初ガツオの刺身」「シロウオの卵とじ」「タケノコ煮」、そして丸山さんおススメの「銀ムツの煮つけ」もお願いしましょう。ああ、春っていいな。お料理に、わかばのような柔らかさと希望の息吹きが感じられるから。きれいな甘みと若々しくすっきりした飲み口の三割九分も、『獺祭』の中ではわたしにとって春のお酒です。

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創業64年の「安兵衛」は、オープン当時は宴会中心で、お酒やお料理を運ぶ女性は全員、着物姿。新宿界隈ではかなりの高級店として知られていたそうです。しかし世の中は刻々と変わります。ましてやここは新宿。そう、ご主人によると、新宿のお客さんは飽きっぽいとのこと。もともと住人の入れ替わりが激しいうえに、飲食店の数の多さたるや、想像を越えています。生き残りは、今も昔も熾烈を極めていることでしょう。そんな中、「安兵衛」は宴会中心の営業形態から、日本全国の美味しいお酒とお料理を、リーズナブルに提供する銘酒居酒屋へと変遷していきました。飽きっぽいという新宿のお客さんも放さず、さらに周囲の地域からも「安兵衛」を目指して多くの人に来てくれるようにするために、料理に力を入れました。6年前にはリニューアルもしました。お店を守る丸山さんは3代目。初代の女将さんの孫にあたります。その女将さんが見守る中、仲間と酒を飲むのが大好きなコアなファンや、旧国鉄時代からの常連さんに引き立てられ、”思い出横丁”で「安兵衛」は今夜も営業中です!!

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変わるということ

 日本酒が注目されはじめています。長らく低迷期にあり、焼酎に押され、ワインに負けていた日本酒が、食と合うお酒としてふたたびお客様に選ばれ始めています。メディアでも日本酒をテーマとした特集が毎月のように組まれています。その火付け役の一端を担っているのは、間違いなく『獺祭』だと感じます。

学生時代、日本酒は頭が痛くなるお酒だと思い込み、ビールばかり飲んでいたわたし……物を書きたいと仲間と語り合っていた頃も、深く刷り込まれたその意識は変わりようもなく、新宿の◯ょ◯◯ん横丁に来てもお手頃でオシャレなワインを追いかけていたわたし……なのに今のわたしは、こんなにも変わりました。時代は変わるし、人も変わる。変わることを怖がらなくてもいい。変わらないことにこだわらなくてもいい。人もお酒もお店も町も。
一昔前とは驚くほど変わっているのに、やっぱり懐かしい新宿の横丁を、いつまでも歩いていたいような夜でした。

今夜も素晴らしいお酒とお料理に出会える幸せに感謝して、乾杯!

蔵元の蛇足

しょんべん横丁、いいなぁ・・・・・! 

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