◎こんなことしました

2月8日に味のマチダヤの木村社長に誘われて、有線大阪の「田中雄望のこだわり食イング」に出演しました。この番組は全国のこだわりのお酒や焼酎を取り上げようという番組だそうで、番組の中で実際に当日のメインゲストの酒を飲みながら40分おしゃべりをするという、酒蔵にとっては宣伝にもなるありがたい番組で1も2も無くOKしたのですが?

このコーナーの前に料理コーナーがあって、女性パーソナリティーが料理を作って見せるのですが、当日早めに渋谷の表参道のスタジオ入りした若干緊張気味の私の目の前で、その女性パーソナリティーが電子レンジの温度調節のスイッチを入れ忘れちゃって(ナマ番組ですよ!)料理を失敗してしまい、もう一度作り直して、こだわりコーナーでお酒と一緒に試食することになってしまいました(デンマーク料理を!)

ところがこれがどんぴしゃ合ったんですよ。お酒と。

よく考えてみれば、バターたっぷりのパイ生地にアンチョビを乗せてチーズを上からかぶせているんですが、アンチョビって鰯ですし、チーズは吟醸酒には馬鹿チョンで合うつまみですから合わないことは無いんです。

―山羊の青カビのチーズは吟醸はほとんど合います。と言うより、少々ボロの吟醸でもおいしく飲めてしまう、酒蔵にとってはおもしろくないつまみです。ついでにもう一つ、地元の磯田酒店のお母さんに伝授いただいたんですが、クリームチーズをさいころ状に切ってオカカを振ってしょう油を一垂らし・簡単クッキング・おいしいですよー。ためしてください。純米吟醸の肴はこれでバッチリ。

話が横にそれちゃいましたけど、その番組に私共が持ち込んだのは勿論一番の自信作純米大吟醸「獺祭 磨き 二割三分」。そのお酒を最初に口に含んだときの番組進行中の皆さんのはっとした表情。うれしかったなー。酒蔵にとってお客様が最初に口にするときの一瞬ほど怖いものは無いんですね。だからこそ、満足した表情をして頂けると本当に何物にも代えがたい気分です。

その翌々日、こんどはフルネット主催で目白の椿山荘で行われた「日本酒と料理を楽しむ会」に参加してきました。フランス料理と日本酒を合わせて見ようと言うギャラントな会でしたが、参加した酒蔵が「山酒」 「南部美人」 「浦霞」 「李白」と私共「獺祭」ですからけっこう力の入ったお酒が並んで、お客様も熱心な方が多く楽しい会でした。そうそう、女性が7割を占める会でしたが、日本酒を好きな女性は美人が多いという私の定説を立証する方々だったこともご報告します。そのあと二次会はご存じ大塚の串駒に行きまして、更に三次会、ホテルに返ったのは?時。(正確な時間は一緒に居られた漫画家の高瀬斉先生のホームページを参照してください)

こんなに飲んでて良いのでしょうか。

自分が楽しむだけではいけませんから、新着のイベントニュースを紹介します。

「20の酒蔵と20人の作家による」酒と酒器のエキシビションこれまで2回は京都で行われていましたが、今年は古都金沢に会場を移して開催されます。主催者が全国から選んだ20の酒蔵の酒を20人の陶芸家が利き酒してその酒に合わせた器を作るという非常に面白いと言うか主催者のこだわりがすばらしい会です。

参加するお酒は「開運」静岡 「勝ち駒」富山 「義侠」愛知 「黒帯」金沢 「獅子の里」石川「常きげん」石川 「神泉」石川 「正義桜」岡山 「宗玄」石川 「獺祭」山口 「近つ飛鳥」大阪「千代の亀」愛媛 「天狗舞」石川 「能登誉」石川 「花垣」福井 「琵琶のささ波」埼玉 「福の宮」石川 「梵」福井 「万寿泉」富山 「万歳楽」石川の20蔵です。

3月18日(土)から20日(月)までJR金沢駅構内のふれあいプラザで開催されます。

お時間のある方はどうぞ。

◎最近こんなことを皆さんに話しています。

月刊酒文化2月号で清酒の水割りについて意見を求められて以下のようにコメントしました。

料理と一緒に飲んでいただきたい

  • 旭酒蔵(山口県周東町) 桜井博志

燗酒全盛の中から冷やで飲む吟醸酒が飛び出してきたように、あくまで飲み方は自由であるべきです。ただ、個人としては胃の中で適度なアルコール濃度に薄める、つまりおいしい料理とともに楽しんでいただきたいと思っています(高価な料理だけをイメージしているのではありません)。キチンと精米したよい米で造った原酒を、16度くらいに割り水して、肌目が細かくてスムーズで気品があって、尚且つ芳醇な、そんなお酒をおいしい料理とともに味わっていただきたいと思いながら酒を造っています。

参考までに全体の記事と他の方からのコメントを掲載いたします。いずれもいろいろおもしろいですよ。(月刊酒文化2月号の記事より)

清酒を自由に楽しみ尽くしたい

  • 編集部

実は、残業の友にけっこうお酒を飲んでいます。夏はロック、秋冬になるとお湯で10度以下に割ることもあります。ここまでやると酸のバランスが崩れることもありますが、ときどきすっきりとおいしいものもできます。特にお湯割りは軽い酔いがスーときて、パッと醒める。こんな飲み方は邪道かなと内心後ろめたく思いつつも、度数を下げるだけでなく、酒で自由に遊べることが楽しいのです。いろいろな酒、いろいろな温度で時と場合に応じてさまざまな飲み方ができるのだと提案してはいかがでしょうか。焼酎は、いろいろな飲み方を楽しむことで広がってきました。清酒も、オーセンティックな部分も大切にしながら、もっと自由に飲んでもよいのだと訴えていきたいと思うのです。(Kさん)

※ みなさんのメッセージの先頭に列記した酒は、水割りに向いていると推奨いただいたもの。

遊び感覚で提案したい

  • 名古屋市 Uさん

・純米酒、原酒、古酒

ファッションとして広めるべきかと思う。次世代の清酒ファンを作るには、単にストレートで飲める低アルコールだけでなく、遊びの要素を取り入れながら、水割り(ただしオン・ザ・ロック)を提案すべきかと思います。深く考えずに楽しんでみよう。

ライトな酒は好評価される

  • M商店(東京都中野区) Aさん

・普通酒、原酒

聞いた話ですが、江戸時代の酒造りは造った酒の量で年貢が定められていたので、かなり濃い酒を造り、年貢を納めてから、売る時にはそれを水で薄めていたらしい。昔の税金対策だったのでしょうか。清酒の水割りについてテレビで見たのですが、同じ酒を一方はそのままで、もう一方は水で割って「みずます」というブランドで通行人に試飲してもらったところ、圧倒的に「みずます」の方が好評価でした。酒通を自負する人も、この淡麗さは新潟の酒に間違いないと、「みずます」を支持していました。ライト感覚の酒類が、やはり好まれるのでしょうか。

専用の原酒の開発が必要

  • 東京都中央区 Sさん

・普通酒、原酒

純米酒も水割りに合うと思うが、清酒のコクを楽しむ酒質であるので、あえて選択しなかった。水で割る事で香味のバランスが崩れてしまうため、専用の原酒が必要になると思う(現在の原酒は13〜15度用で設定)。昔は精白度が低かったため、濃醇な酒質であった事を考慮すると、現在の淡麗な酒質では水に負けてしまう。「冷たさ」や「熱さ」も味覚の一つであるという説からすると、ロックにしたり、お湯割りにすることで、「冷たさ」「熱さ」という味を付与できるという考え方もできる。私もロックで飲ったことがありますが、個人的にはロックで飲む清酒は「アリ」だと思います。

蔵でもロックで飲んでいた

  • S酒店(東京都練馬区) Sさん

・長期熟成酒、ロックにも向いています

もう数年前の事になりますが、ある蔵元におうかがいしたら、卓をかこみ、夏でしたので、ぐい呑みに氷を入れてロックでやっていました。その輪の中に高名な酒の技官がおられ、清酒のひとつの飲み方を教えていただいた思いでした。

きれいな酸のある酒

  • Nさん

・普通酒、純米酒、吟醸酒、山廃、生はい系、原酒すべて可

フランスでもワインを水割りで飲んでいる。まして日本酒はワインよりアルコール度が高いので、原酒はとろっとしているが、のどを通る時にアルコールを強く感じる。

私は、なるべく酒(飲料)は体に刺激が無いものというポリシーを持っているから、日本酒も10から14度くらいにして飲むと体にも優しい。これはどんなタイプの酒にもいえますが、私とすればもっと酸味のあるタイプ(きれいな酸と申しましょう)であってほしい。酒粕のような酸はいただけない。

本当においしいのは原酒?

  • U酒店(秩父市) Oさん

・普通酒、純米酒、吟醸酒、山廃、生はい系

以前は燗ロックが流行った。まずい酒も飲めた。夏場はロックビールを飲んでのどしめしをして、いろいろな酒をロックで飲んでみているので、別に何でも大丈夫だと思う。昔、樽で買った時代は、水で薄めてその具合が店主の腕の見せ所、あの店の酒はうまいとか、濃いとかで売れ具合が違ったそうです。しぼりたての生原酒やひやおろし原酒など、ロックか水割りでもいいと思っています。ただ、先日ある蔵の酒を数種類、原酒と市販度数にして比べたところ、10人が10人とも、原酒が旨いという意見でした。という事は?

お湯割り・水割りともおいしい

  • Gさん

・純米酒、吟醸酒、山廃、生はい系、原酒

水割りは、生の原酒でしっかりした酸と濃さのある、あまり辛口でないもの、吟醸味があるのもおいしい。お湯割りは、濃さと酸のあるしっかりとした酒。火入れ酒。吟醸味はないほうがよい。いずれも純米であったほうがよいと思います。お湯割りは焼酎のお湯割りよりおいしいと思います。お湯割り、水割りに賛成します。

楽しむための酒落ならば

  • O酒店(新潟市) Oさん

・古酒

度数の高い酒とミネラルウオーターを使う。酒も個性のしっかりしたものがよい。本来は清酒その物が旨すぎる酒であるので、水で割ったり、炭酸をいれたりする事自体は邪道ではないのですが、楽しむための事、酒落の一つ、あまり深く考えることはない。新潟県北魚沼郡守門村の玉川酒蔵の「スーパー舞三六」この酒は水割りに合います。

おいしく思えればそれでよい

  • K酒店(静岡市) Kさん

・山廃、生はい系、原酒

「超辛口と超甘口をビーカー、フラスコでブレンド」「原酒のロ?ク」の飲み方を皆様にアドバイスしたことがあります。水割りは今少し考えてみたいと思います。割合を考えてやればいいのかな。でも、お客様がうまいといえばそれまでのように思いますがいかがでしょうか。他の方々の意見を参考にしてみようと思います。

よい酒ならいろいろ楽しめる

  • Y酒店(倉吉市) Yさん

清酒のタイプとしては、純米酒(吟醸含むでタイプは問いません)です。アルコール添加酒は全く合いません。ただし、造りのよい純米酒に限ります。反対に造りの悪い純米酒は水割りすると変になりますから、自店の取り扱いの純米酒を水割りされるとよいでしょう。結果は、吉と出るか凶とでるか?。ミーハーばかり追いかけている酒屋さん、残念でしたね。純米大吟醸(もちろんよい造りのもの)など、原酒に近いアルコール度数で出荷されていますから、10%ほど増量して「1割引」の気分が味わえます。水割り=割り水の場合、うまく混ざらないで香味のバランスが崩れることもあります。飲おう分量だけ徳利などの容器にとって、手などで蓋をして4、5回は上下を逆さまにしてよく混ぜましょう。飲む分量にこだわったのは、アルコール度数を下げればそれだけ保存が困難になりますし、水が信用のおけるものでなければ、すぐに腐敗してしまいますから、全量水割りすると残酒がもったいない状態になってしまうからです。ロックにされて飲まれたようですが、ロックぐらいしないと(水割りでもそうですが)飲めないほどベタベタな酒が東京市場では多く見られるようですね。

つまり、逆もまた真なりで、造りが悪い酒も水割りやロック(や、キンキンの冷酒)にでもしないと飲めないのである。個人的にロックはあまり好みません。酒の温度が下がりすぎるのは好みません。旨い酒飲んでるのに、なんでその旨みがわからなくなる温度にしなけりゃいけないの?つまり、よい酒(=純米酒)は、いろいろ楽しめるってことですね。

そのままのほうがおいしい

  • K酒店(大野城市) Kさん

・原酒

私は、10年前に1回だけ、問屋さんの営業の人と日本酒を水割りにして飲んだことを思い出しました。でも、あまりおいしいとは思いませんでした。そのまま飲んだほうがおいしいと思ったのですが、日本酒をあまり好きではない友人飲ませたところ、おいしいの一言でした。その女性は、生酒(原酒)を水で割って飲んでいました。もう1回このテーマのために、日本酒を水割りにして飲みました。でも、10年前と一緒でそのままのほうがおいしかったです。でもロックは好きですよ。

自宅の晩酌は好きに飲めばよい

  • Y酒店(加須市) Yさん

・山廃、生はい系、原酒、甘口の酒

自分でやってみたことがないのではっきりとしたことは言えませんが、水割りをしなくても水っぽい酒もたくさんあるので、しっかりした重口の酒を水割りにするのは、ありかなと思います。要は好みやその時の気分と体調で、酒の飲み方に細かいルールはいらないと思います。特に自宅の晩酌は好きに飲めばいいんです。

日本酒らしさを失わないように

  • A酒店(奈良県田原本町) Mさん

・原酒、古酒

結論から言えば、嗜好品なので飲み手がおいしいと感じれば水割りもいいと思います。ただ一般的には、原酒のようなアルコール度の高いものや、味わいの濃いものが水割りに向いていると思います。夏場に生原酒をロックで楽しんで下さいと提案することはよくあります。水割りにしてもロックにしても、アルコール度数が14度より低くならないくらいがベストだと思っています。それ以下だと本来の香りや米の旨みが味わえず、本当の日本酒とはちょっと違ったものになるのではないでしょうか。日本酒が日本酒らしさを失ってまで、日本酒を飲まなくても、また売らなくてもいいかなと思います。日本酒ファンを広げるためにすべきことは他にもっとあるでしょう。

高齢化時代に水割りはマッチする?

  • H酒店(鹿児島市) Wさん

・原酒

原酒なら水割りにも向くと思います。特にこれからのシーズンを迎えるしぼりたて生原酒の類は消費者の側でもいろいろに楽しめると思います。

醸造酒でありながらアルコール20%近くにも達して出荷される日本酒の原酒は、それ自体は世界に冠たるお酒として認められ誇りうるものと考えますが、生理的に抵抗を覚える人が結構いることも考慮しておきたい。その人自身にとって濃度が高いと感じるお酒は体力を消耗するものです。「体に優しい熟年の酒」と銘打ち、アルコール度数を低減した清酒があるように、メーカーも消費者もそれぞれにとって歩み寄れるぎりぎりのポイントを探る努力は、してもよいのではないでしょうか。

清酒は、多様で複雑な要素が絡み合って、あのような味香完成度の抜きん出て高いお酒になっていると言えます。アルコール分15から18%が主流を占めるのは、アルコール濃度も大事な要素であるからですが、清酒そのものの味や品格をよく理解し尊重するという前提の元に行うのであれば、メーカーが製造活動の最終結果として責任をもって世の中問うた製品に、メーカーのあずかり知らぬところで手を加えられることに対する危惧感とも折り合いをつけられるかもしれません。

自分の生理と好みにあった濃度のお酒をじぶんの操作で飲むことができるとなれば、消費者にとって健康的安心感と楽しみが増えることになり、新たな可能性を開く事になるかもしれません。高齢化社会を控えておればなおさらと思います。

割り水してから燗をつける

  • 酒屋M(山梨県上野原町) Sさん

・吟醸酒(ただし原酒タイプ)、山廃、生はい系、原酒

日本に限らず、全世界的に酒類の味わいがライト指向に移りつつある昨今、水割りやオン・ザ・ロックといった飲み方も否定すべきではないでしょう。ただ、とにかく軽ければよいとばかりにえやたら割り水をして、ベタベタの甘さと重い酸味の、一部の低アル酒は駄目ですけど(逆に清酒離れを加速させる)。生はいや山廃は、割り水をしてから燗をして飲むとまたおもしろい味わいがでます(純米もしくは本醸造)。

純米原酒をアルカリイオン水で

  • M酒店(東京都世田谷区) Uさん

だいぶ昔に、宮崎の焼酎メーカーの社長が「うちの酒をたくさん売ってくれる業務店に行って、その秘訣をきいたら「前夜に割り水をして15度ぐらいにした焼酎を仕込んで、それをお燗して出す」のだそうです。そうすると、6:4のお湯割りとは全く違った味になるそうです」と話していました。15度や13度に調整されて市販されている酒は、杜氏さんやメーカーが完成品として出したものですから、加水して旨くなるとは思えません。経験的にはほとんど腰砕けになります。純米原酒をミネラルウォーターで割ったものを一晩置くと、いくらか飲めるようなものになります。そこでお勧めする私がやっている方法は 純米原酒をアルカリイオン水で割って飲む方法です。この水ですと、水の分子が、普通のミネラルウォータよりずっと小さいため、酒の分子と結合して10度くらいに落としても水っぽく感じません。手軽にお好みの濃さで日本酒がおいしく飲めますので、是非1度お試し下さい。ただし近頃、イオン水に粗製乱道の物が出始めましたので、水遊びには充分にご注意ください。

◎季節のおすすめ

Y2Kいかがでしたか。

私共は、コンピューター関係では別段トラブルはありませんでしたけど、前回の蔵元日記に書きましたように、搾り機へ酒を送るポンプが故障して、ローテクのY2K問題?が発生して、てんやわんやでした。

前回元旦搾りの純米大吟醸という究極の季節商品をだしちやいましたから、お勧めの商品に悩むところですが、出しちやいましょう純米吟醸霞酒「雪化粧」一霞酒の語源は無濾過のため少し酒が霞んでいるからです。

   純米吟醸霞酒「雪化粧」

   使用米    山田錦

   精白      50

   720ml    1,390

720ml詰めは新酒になっています。しぽりたての寒造早槽(かんづくりはやぶね)が売り切れてしまいましたから今現在唯一雪化粧の720mlが新酒になっており、季節の品としておすすめです。