最近の新生獺祭シリーズの「磨き二割三分」と「45」、どちらも酒としての仕上がりに自信があります。まず、きれいな香りとともに入ってきますが、口の中での味わいは何層かの複雑性にあふれていて、皆様をきっと魅了すると思います。

 このお酒は、最初は築地の国立がんセンターの研究部長として在籍しておられて現在は東京医科大学の教授として研究に携わっておられる落谷先生の示唆で始まりました。(最近コロナ重症化を判別する血液中のエクソソームの発見で日経にも取り上げられていましたね)

 酒は百薬の長と称されるけど、技術の発展とともにそこから遠くなってきた。だからと言って、現代の日本酒が手に入れた「飲み物としての美味しさ」を手放す気は無いけれど、その中で古来からの発酵の力を獺祭に取り戻せないか?

 そんな思いでこの「新生獺祭」の開発が始まったのです。「こんな酒を世に出すことが酒蔵の良心」との思いから、中身も説明できないし、したがって売れるか売れないかもはっきりしない、にもかかわらず、世に出したのがこの酒です。

 しかし、最初の頃の酒としての仕上がりは、満足できるものではありませんでした。この「新生獺祭」は「新生甘酒」とも共通していますが、酒の発酵中に生まれる様々な変化に着目し造られています。しかし、どうしてもそちらに力点が行ってしまうため、バランスを取るのが難しかったのです。

 特に最近の通常の「獺祭」が本当にバランスよくまとまっているがゆえに、よけい粗さが見えてしまっていました。初期の「新生獺祭」は、すうっと最初にきれいに上立ち香が入ってきて口中の印象も初期段階では非常にきれいでしたから反対に中盤から見える粗さが苦味やエグ味のように感じられてまとまりを壊していたのです。

 製造からすれば「これだけのものを造っているのに、これ以上どうするというんだ?」と思っていたと思います。しかし、「空気を読まない」会長が担当スタッフに何度もダメ出しをしたんです。結果として彼らはこの粗さを洗練された複雑味に昇華させたのです。

 やっと、何とか及第点にたどり着いた「新生獺祭磨き二割三分」と「新生獺祭45」、どちらも自信あります。ぜひ、試してやってください。お酒の苦手な方は「新生甘酒」をどうぞ。

 

-------新生獺祭について追記 飲み方などなど-------

上述の蔵元日記・新生獺祭編を読んだ方からメールをいただきました。「昔の滋味のある酒は、磨きが80とか70だったということでしょうか。その旨み?を取り入れた新生二割三分、どんなお味・香りか?気になりました!」というものです。ありがとうございます。ぜひ、試してみてやってください。

 ところで、僕が思っている「太古の酒」というのはもう少し古いものなんですね。室町時代には今の酒造りの基本的技法を確立していました。その頃の「酒」の精米歩合は限りなく玄米に近いか少なくとも90%以上だったと思います。しかし、すでに商業化に向けて「酒」の技術は走り始めていて、江戸時代に杜氏制度とそれと不可分な技法である寒造り(冬場しか造らない)技術が確立されることにより一つの頂点を達成します。

 つまり、私たちが知っている酒というものはどんなに自然技法といってる酒でも蔵元の経営安定化に向けて技術開発された商業技術の申し子という点からは逃れられないのです。その意味では、私たちは現代の技術革新の狭間の中で「太古の酒」の良さを、憧れを持って見つめながら、それでもより良いものにしていこうとすることしか許されていないのです。(少なくとも旭酒造にとっては)

 ということで新生獺祭、最初の頃、「このお酒はいろんなお酒の中で他のお酒に脇目も振らず、この新生獺祭だけ飲んでほしいんじゃない、毎日少しづつ、できたら60mlぐらい飲んでほしい」といっていました。しかし、これは間違っていました。というよりこれでは美味しく飲み続けられないのです。

 敬愛する虎ノ門の社長からこんな意見をいただきました。「言われたとおり毎日少しづつ飲んでいたら、だんだん薬みたいに思えてきて美味くなくなるんだよ!」とのこと。そりゃその通りですよね。それと、すでにそのビンはキャップを開けてるわけですから、いくら冷蔵庫に入れてもらっていても酒の酸化が進んでしまいます。

 ということで、言い方を変えます。「時には新生獺祭を飲んでください」「そしてできたら開栓した新生獺祭のボトルは古くなって酸化する前に一週間以内には飲みきってください。そしてその後はいろんな他のお酒や美味しいものを楽しんでください」「そしてまた2~3週間に一度ぐらいは新生獺祭を思い出してください」

 獺祭は皆様方の幸せとともにありたいと思います。

 【大竹まことのゴールデンラジオ】

ところで先日、文化放送の番組で10月12日の「大竹まことのゴールデンラジオ」に出演してきました。

 不謹慎にも最近思うんですが、私がタレント業だったらこのコロナ禍ははっきりプラスで、テレ東さんはじめいろんなマスコミ媒体からお声がかかることが増えました。共にこの苦境下で苦闘しているビジネスマンの皆さんに少しでもエールが送れたらと思い、可能な限りうけるようにしています。そんな中で文化放送の三木会長のお声がかかり出演することになりました。

 大竹さんって方はあの直截さが魅力で、よく「ビートたけしのTVタックル」なんかに暴言キャラが売りの貴重なバイプレーヤーとして出演していますね。約一時間の出演でしたが笑いっぱなしの一時間でした。

 例えば、「それって、結局、その頃のあんたん所の酒ってうまくなかったってこと?」「売れなかったってそういうことだよな」なんて、ふつう番組の中でゲストに聞かないでしょ。こっちはタレントじゃなくて一般人なんだから。でもこっちも思わず釣り込まれて「あはは、その通り」なんて答えていました。

 ラジコかなんかで過去の番組も聞けるのならぜひ探して聞いてやってください。

 ところで、スタジオを出たところでビックリ。獺祭二割三分の小瓶を持って小柄な紳士が「ボトルにサインして」とロビーに立ってるんです。よく見るとあの経済評論家の森永卓郎さん。「これ、反対だよね。こっちがサインをほしいくらいだけど」と思いながらサインさせてもらいました。ちょっと、「エッヘン」