旭酒造が2019年から開催している原料米「山田錦」のコンテストの発表会を開催致しました。

第一部では、日本を代表し世界で活躍しているトップソムリエたちが集結し、2019年優勝米で造られた「Dassai beyond the beyond」のテイスティング会が行われました。

 

「Dassai Beyond the Beyond」

160の生産農家からエントリーがあった第一回「最高を超える山田錦プロジェクト2019」でグランプリを獲得したのは栃木県大田原市で農業を営む坂内義信氏。山田錦の栽培を始めてなんと4年目での快挙でした。

この優勝米を用いて、旭酒造3名の精鋭がありったけの技術と情熱を注ぎこんで造られたお酒「Beyond the Beyond」は、23本のみ製造され、2020年のサザビーズオークションにて最高額1本84万円で落札されたことでも話題となりました。


参加ソムリエ 

ご登壇頂いた皆様は、事前に岩国の旭酒造までお越しいただき、獺祭の酒造りを見学され、獺祭数種類のテイスティングも体験して頂きました。

  • ・石田 博   一般社団法人日本ソムリエ協会副会長 / レストラン ローブ(右写真)
  • ・谷 宣英   同 常務理事/ホテル ニュー・オータニ 料飲部レストラン課長兼エグゼクティブシェフ  ソムリエ
  • ・森 覚    同 常務理事/ コンラッド東京エグゼクティヴソムリエ
  • ・野坂  昭彦 同 理事 / マンダリンオリエンタル東京シェフソムリエ
  • ・岩田 渉   同 理事 / THE THOUSAND KYOTO シェフソムリエ
  • ・井黒 卓   同 理事 / ロオジェ ソムリエ
  • ・森本 美雪  コンラッド東京 ソムリエ

 

高まりつつある世界からの注目

日本酒の良さについて、森氏は「食事と合わせた際の汎用性の高さ。

米、造り、温度、グラスといった変化の多さが特徴で、どんなお料理にも合わせ楽しむことができる。」とコメント。一皿ずつお酒を変えるペアリングスタイルが主流のワインに対し、一本でコースの前菜からデザートまで通すことのできる楽しみ方の幅の広さを評価されました。和食が世界無形文化遺産に登録されたことで、日本酒も世界から大注目を浴びているそう。

また、原料米山田錦について、岩田氏は「米の個性が酒に表れていることを感じる。生産者のパッション、酒蔵の想いを感じられる」とお話すると、石田氏も続いて「山田錦はブドウでいうところの“noble 高貴品種”。」と、高品質な米由来の味わいにコメントをくださいました。

酒を「利く(=評価する)」のではなく、「ソムリエは酒を魅力的に表現し伝えるのが使命」と石田氏。その言葉通り、皆様からは豊富な知識に裏付けられた鮮やかな表現が次々と溢れました。とても一言で要約することなどできないのですが、「繊細かつ壮大、非常に長い余韻のある至高の1本」というコメントは皆さん共通していました。

 


「Beyond the Beyond 2019」テイスティングコメント

頂いた中から、一部抜粋してご紹介します。

■森 覚 氏 

【味わい】

流れるような滑らかなテクスチャー。口中でも豊潤な果実とスパイスのフレーヴァ―が広がり、緻密な酸とアルコールのバランス、ふくよかな中盤の味わい、余韻が広がりエキゾチック、妖艶、創大な味わいが長く残る。

【特に印象に残る点】

味わいに感じられるスケールの大きさ、余韻にかけて広がる妖艶な味わいと長いフレーヴァ―。

■井黒 卓 氏 

【味わい】豊か、厚みのあるボディ、抜群のプロポーション、まろやかでしなやかなテクスチャー。緻密な酸味、柔らかい甘味旨苦味を伴ったフィニッシュ。メリハリがある。モニュメンタル。

【特に印象に残る点】

とてつもなく長い余韻

【合わせる料理】

王道フレンチ。キャビアを使用したお料理。キャビアが持っているクリーミーなテクスチャーがBeyond the Beyond が持つまろやかでクリーミーな食感にピッタリ合う。また塩味と山田錦の独特な甘苦みがお互いを支えあうのが想像できる。

■森本 美雪 氏

【味わい】第一印象には豊かさと山田錦由来の甘みが広がる。中盤から余韻にかけて心地よい爽やかさ、苦みが出てきて余韻の旨味につながってくる。白檀や山椒のフレーヴァーが“日本の奥ゆかしさ”を象徴している。

【特に印象に残る点】

「獺祭 磨きその先へ」のその先へとは全くスタイルが異なることにまず驚いた。こんなにも山田錦の甘み旨みが感じられ、かつ余韻が長く日本らしい“奥ゆかしさ”“旨み”“滋味深さ”を感じられる日本酒はない。

【合わせる料理】

伊勢海老の黄身酒盗焼、穴子とフォアグラのテリーヌ、鰆の幽庵焼、リード・ヴォ―とオマール海老のソテー バニラとオレンジのソース


最高を超える山田錦プロジェクトとは

旭酒造は2019年から、全国の山田錦農家に今までの山田錦を超えるものに挑戦して頂き活気をもたらそうとコンテストを開催。グランプリ米は60俵3000万円という市場価格の約25倍の賞金を贈呈しています。2019年から始まり3回目の今回、全国11以上の県から50件以上の旭酒造と契約している個人・企業からのエントリーがありました。

今回の大きなポイントとして、評価基準として「獺祭のお酒造りに適した米であるか」という目線が加わったことが挙げられます。

昨年2020年度のグランプリ米は、山田錦としては非常に素晴らしく、大きな心白(酒造りに重要視される、山田錦の中心にある白い部分)が特徴的でしたが、実際にお酒造りを行ってみると、獺祭のように20%以下まで精米する超高精白には向いていないことが判明したのです。

そのため、今年の審査からは「超高精米という、従来の日本酒を超えた品質を作る際に必要な要素に耐えうるもの」という評価基準に。具体的には、心白が小さく中心に入っている米が良いとされました。

審査員のメンバーにとっても今までにない難しい審査会となりました。

 

和食の浸透とともに日本酒の注目度が徐々に上がってきてはいるものの、日本酒を世界にきちんと認めさせるために、ワインを含めた他のアルコールとの文化戦争を乗り越えて行く必要があります。旭酒造は最高の獺祭を造ることで、世界の日本酒の価値を高め、知らしめようとしています。

獺祭なりの方法で山田錦生産者と日本酒の未来を創っていくため、私たちは挑戦を続けます。